熱田神宮探訪記(本編)
2021/06/21探訪
記
さて、本文である。 熱田神宮は名古屋から電車で直ぐである。最寄駅を出ると眼前に神社特有の気を宿すこんもりした森が見える。 お天気はピーカン。つーか、真夏の様に暑い。 横断歩道を渡れば、熱田神宮の横の入り口へと繋がる。 私は首を傾げた。 入り口に狸の様な顔をした同世代とおぼしき老人の虚無僧がいる。 (神社に虚無僧?) 疑問はそれだけではない。纏っている気が獣ぽくて人間の様な気がしない。 それでも敬意は表せないといけない気がした。 千円札をお布施にした。たかが千円と言うなかれ。私にとって千円は普通に働いている方の一万円に相当するのだ。 渡す時に『あんた人間かい?』と心の中で尋ねたが、当然、返事は無かった。 神宮に入ると無駄に広い参道があり、しばし歩むと、大きく開けた場所に出た。まるで広場だ。真正面の奥にモダンなデザインの真新しい社務所と本殿が見える。 陽を遮るものがないのは辛い。ミッチーさんは小走りに社務所に向かった。 ミッチーさんを待つ間、本殿あたりから黒龍が空へ飛び立った。 『おい。この日差しはキツイ。少し雲で覆ってくれ』と心中で語りかけると、飛び去ろうとしていた黒龍は舌打ちをして、振り返る。 『参拝の間だけだぞ』『ありがたい。助かる』と感謝を示す。 その時、龍は皮肉気な笑みを浮かべて、 『7月7日から大浄化が始まるぞ』そう捨て台詞の様に言うと東の空へ飛び去った。 (思ったよりも若造だな)と思うと共に、人死にが出る雰囲気じゃなかったなとも思う。 この一連のやりとりは私の妄想の可能性が大きいことを述べておく。 私のスピリチャルな知識の半分以上は、このような妄想や夢から得ている。だから妄想分裂症と思って頂いて構わない。 ただ、雲は出た。写真を添付するので見て欲しい。「変わっていないじゃないか!」とも言われるかもしれないが、炎天下から救われたのは事実である。
さて、そんな事をしている間にミッチーさんが、私の分も含めてパンフレットを持って来てくれた。 まず本殿にお参りする。二拍の手がタイミング良く合う。 頭を下げたところで、(あれ? 三柱おられないのか?)と思う。参拝の後、覗き見て確認しようとしたが、高い板塀に阻まれて見えない。(見られては悪いことがあるのかな?)そう思わざるを得なかった。良い気を放つ大木があったので、座らせて頂きますとお断りをして、座ってパンフを見る。私は良い大木があると座ったり、抱きついたりして気を頂く様にしている。
気持ちよく座らせて頂いた。そしてパンフをじっくりと見て不思議に思った。「日本武尊」の名が無い。思い違いかもしれないが、熱田神宮は日本武尊を祀っていたのではなかったっけ?そもそも主祭神の名前も無い。三種の神器の刀を修めるには、それを引き取るにふさわしい神が必要ではないか!? じゃぁ、本殿にはどなたを祀っていると言うのだ? それに正史にはないが、倭姫の関わりも深かった様に思っていたのだが…… 首を傾げていると、老齢の警備員に「木に座らないで下さい」と注意を受けた。素直に立ち上がり、ミッチーさんと共に本殿裏手の奥の院へと歩みを進める。元々、広大な熱田神宮ではあるが、目的は奥の院にしか無いと言っても過言はなかった。 本殿に向かって右側の小道に入る。本殿越しに小道は続く。本殿の裏へ回る様に左に曲がって、「なんや? あれは?」と思わず声に出した。
普段の私なら近づいて材質など色々触って調べるのですが―――中央、奥にオーブがあるのが見える方はおられるでしょうか? 見える方は更に注意してオーブを見て下さい。お爺さんが険しい顔でこちらを見ているのが分かるでしょうか? 「君子、危うきに近づかず」と申します。今回はミッチーさんもいます。特攻は断念しました。もし、これが何かご存じの方は是非お教え下さい。 熱田神宮と言えば、本殿裏手にこそ見るモノがある。 熱田神宮を参った感覚の鋭い友人達は口を揃えてそう伝えてくれた。特にご神木の霊気は熱田神宮の根本だと言っていた。 裏へ回ろうとして、体格の良い壮年の男性とすれ違った。 「こんにちは」と声をかけたら、振り向いて鷹の様な目で睨み据えられた。 カチンと来た。 (礼儀知らずが、呪われろ)と思ったが、あの気迫、人間の域を超えていたような気がしたので、文句をつけるのは止めた。 裏へ回って件のご神木と対面した。流石だ。並の霊気ではない。私はそのご神木に母の慈愛の様なものを覚え、落涙しそうになった。
ご神木の横には社がある。 誰を祀っているのか分からない謎の社がある。また、このご神木から本殿の何かへ向かって、強い龍脈の流れを感じた。 取り敢えず謎の社を写そうとカメラを向けると、頭上から白いミルクの様な気が大量に降りて来て、体を包む。ミルクの中には無数のオーブが浮いていて、オーブの一部には顔が浮いている物まである。 (ヤバイ!) そう思ってファインダーから顔を外した。ファインダー越しには見える霊体も肉眼で見たら消える事もある。 「なんや!? これ!?」 思わず叫んだ。 ミルク色の霧は完全に私を覆い、霧の中に大小のオーブが無数に見える。 経験則からして、これは異界へ誘われるか、とんでもない存在が顕現する予兆だ。私一人なら兎も角、霧に阻まれ見えないが隣にミッチーさんがいる。巻き込む訳にはいかない。 カメラを握った左手の中指と人差し指で剣印を結び、霧全体を祓うように「ティッ!」と印を頭上から腰まで祓うと霧は八割方消えて、隣でカメラを構えるミッチーさんが居た。 念入りにカメラを構えている。 隣で大騒ぎしていた私の様子に気づいた様子も無い。 「霧が出ていたの見えなかったの?」 「―――? 私には愼さんみたいに見えませんし……」 いやいや、あれ実体化してたでしょう? そもそも真横で騒いでいた私に気づいて居なかったって事は、私は異界に囚われていたのか? ぞっとする。 騒ぎ立てても仕方が無い。気を取り直して社を写す。
先ほどよりマシと言え、やはり、オーブとミルク色の霧が降りている様に写ってしまった。ミッチーさんの写真には何も写っていないのに…… この社の隣にも社がある。清涼な気がする社だ。
パンフレットで確認するに、三田神社に龍神社だと思われるが位置が少々違う様に思う。 歩を進めるに、また、ただならぬ気を放つご神木があった。 日差しに霞んでいるように見えるが、これは三つの巨大なオーブを発しているのだ。敷地内に写る細い木三本に注目して欲しい。本殿方向へ曲がっているのが分かるだろうか? これは龍脈の流れに応じて曲がっているのだ。寺社仏閣で奇妙な曲がり方をしている気を見つけたら、龍脈に応じて曲がっていると思って欲しい。 龍脈を知れば、神社の社の配置の意味や、本当のパワースポットの中心が分かります。 更に進むと湧き水による水路に出ます。側に寄ると透明度の高い清水です。ここの水はお肌に良いと記載されていたので、パワースポットに行くときは必ず持ち歩く水晶玉を浸けようとすると、ミッチーさんが「そこは人の欲望で汚れているから、浸けるなんてとんでもないですよ」と忠告を受けた。 水路でかがむと、強烈なドブ川の臭いがした。水は汚れていない。人の欲望は此程に汚れているのかと驚き、水晶玉を引っ込めた。 この神社はおかしい。 そう思って、パンフに良く目を通すと、主祭神は熱田大神と小さく記されていた。 神社の位は厳しく定められている。 神宮を名乗れる神は至高神に近い。 だが、私の知る限り、古事記にも記紀にも熱田大神の記載は無い。 三種の神器の七支刀を預けられる以上、天孫神の大物でないとならない。 だが、私はここ熱田で天孫神独特の気配と高いプライドを感じることはなかった。 ここは熱田大神の荒御霊が祀られている場所だ。私に熱田神宮の報告をくれた友人達はここは力が強く恐ろしい。天照大神の荒御霊ではないかと言う者もいた。 私も恐れを覚えた。どう見ても古墳の石室の入り口だ。 この入り口の結界は見て取れるだけで、五重にある。とても近寄れる物じゃ無い。 ここへ参拝するまで、神の名前として認知していなかった熱田大神と言う謎の力溢れる神を新たに知った。 地元の氏子の方々は熱田大神と言う存在をどう理解しているのか知りたくなった。 ここに来て私は目隠し状態の本殿を写した。 こちらもオーブ化しようとする霧が写っている。 これだけ厳重に囲われていても神気があふれ出すのだから、その高位の力は想像も出来ない。 私とミッチーさんは帰路についた。空はピーカンに戻っていた。 お手水の側の神木にまたまた奇異を覚えることになった。 なして社を頭上に置く? 誰が拝むんだ? なんの為の社なんだ? 熱田神宮。多くの謎を宿題として持ち帰ることになった。 |