【怖い話】廃車


 みなさん、どうも。
 SINです。
 Sさんの大学時代の彼氏は「見える人」のようでした。
 Sさん自身は感じるタイプで、怪談も好きなので色々話すのですが、彼は微笑んで
頷くのみで自分の話などはしません。
「なんだか保護者みたいな人だった」
 Sさんは彼をそう言います。
 一緒に散歩などをしていると、唐突に「ここは一人で来ない方が良いよ」「ここは
夜来てはダメだ」などと忠告します。理由は言いません。
 Sさんはカンが良いので、彼が何かを見て、Sさんの為に忠告してくれる事は分か
ります。
 素直に頷き、後で調べて見ると水害で多くが死んだ場所であったり、事故現場であ
ったりしました。
 なにも調べられなかった空き地は、彼の指摘後、帰宅途中のOLが惨殺されました。

 彼は律儀な性格でデートなどで遅くなると、Sさんを家の前まで送ってくれます。
 Sさんは彼と少しでも長く一緒にいたいので、無理を言いわざわざ遠回りをしてい
ました。
 小さなスクラップ工場にさしかかった時です。
 1台の車が置かれていました。赤いスポーツタイプの型の新しいものでしたが、薄
汚れ、窓ガラスなどは割れてます。
 彼は立ち止まり、その車を凝視しています。
「どうしたの?」
「あの車はいけない・・・・・」
 彼は小さく呟きました。
 その瞬間、けたたましいクラクションの音が夜空に響きわたりました。
 Sさんは悲鳴を上げ彼にしがみつきます。
 彼は騒がず車を凝視しています。
 クラクションは間断なく鳴り続けています。深夜であり、近くに民家もあるのに誰
も様子を見に出てこないのが不気味でした。
 彼の気配に変化があったので、Sさんは彼の顔を見上げました。
 眼光が厳しさをまし、唇が動きました。
「う・せ・ろ」そう動いたように見えたそうです。
 クラクションは止まりました。
 ぼんやりと赤く見えた車内も真っ黒です。
 彼は無言でその場を離れて行きます。
「ねぇ・・・・・」Sさんは聞きました。「ここも近寄ってはいけないんでしょ?」
 彼は笑って首を振ったそうです。

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