呼び鈴

 みなさん、どうも。
 SINです。
 私事ですが、私はかって住宅の役員をしていました。
 そこで、独居老人の孤独死がありました。
 八方手を尽くして親族を捜し出し、なんとかお葬式をあげる事が出来ました。
 で、それから暫くして、深夜2時頃,呼び鈴が鳴りました。
 酔っぱらって自宅の鍵を無くして部屋に入れないとか,そういう訪問も結構あるの
です。
 非常識だなと思いながらも廊下に出ますと、人影はどこにもありません。
 RC8階建てのこの共同住宅の廊下に身を隠す場所などありません。
 首を捻り、部屋に戻ろうとして、私は人影を見つけました。
 その人は小指ほどの大きさでした。廊下の手すりの少し上に浮かんでいます。
 浮かんでいると言う表現は適切ではないかもしれません。
 洗面所などに貯めていた水を流すと、渦が出来ますね。あのような感じで、手すり
の上の空間に,まるで渦で出来たような穴が開いているのです。その小さな人影は,
その渦の縁に立っていたのです。
 お分かりでしょうが、先日、亡くなられたご老人でした。
 その方は私が気づいたのを見て、深々と頭を下げました。そして背を向けると、渦
の向こうに吸い込まれて行きました。
 老人の姿が消えるのと渦が消えるのは同時でした。
 その日は、その方の49日にあたっていました。
 

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