【怖い話】 トンネル


 乳白色の霧はイヤなものが多いようです。

 十年以上前ですので、今はどうなっているでしょう?
 その当時、私はライダーでした。
 大阪から十津川へ良く走りました。
 トンネルをいくつか潜るのですが、そのひとつに古いモノがありました。
 床はアスファルトではありません。石畳です。壁は煉瓦です。
 水滴が常に落ちて来て路面はいつも濡れています。
 バイクで走るにはスリップの危険があり気を使う場所です。
 私は十津川で昼食を予定していましたので、そのトンネルに入ったのは10時前で
す。
 正直不気味なトンネルですので、かなり身構えて入ります。
 暫くすると乳白色の霧が出ました。
 フォグに切り替えても視界が確保出来ません。
 余程水量を含んだ霧なのか、服は豪雨の中を走ったようにずぶぬれになります。
 しばらく走って私は焦りを覚えだしました。
 トンネルが終わりません。
 減速して走っているとは言え、いくらなんでも出口が見えないといけません。
 恐ろしくなった私は呪文を叫ぶように唱えながら、ようやく堕出脱出しました。
 時計は12時を回っています。
 普段は30分かからぬそのトンネルに2時間いた事になります。
 これは純粋に怖かったです。

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