【怖い話】 金縛り

鳥野ささみさんのお話


なんか、久しぶりに思い出した話を書きます〜。

それは、私が、かわいい女子高生していた高校2年生の真夏のことでした。
(ああ、ぶたないで〜!)

別のクラスの友達が、バタバタと慌しく、私のクラスに
駆け込んで来ました。

「鳥野っ! 鳥野って確か霊感あったよな?!」と唐突に言います。
「あ〜、もう、ないねん・・・」と答える私。
私は中学3年生の時に、とても大事な人から、
「見えない、聞こえない、匂わない、存在しない」と言い聞かされ、
本当に、すっかり、「もののけ、来てます!」を感じなくなっていました。

しかし、友達は、
「どっちでもいいわ。ちょっと、この子おかしいねん!
毎日、金縛りに合うんやって!話だけでも聞いたって」と
一人の子を私に紹介しました。

一目見るなり、(こりゃ・・・たしかに、おかしいわ)
だって、真夏なのに、冬の紺のブレザーの制服着てるんだもん。

とりあえず無難に「風邪、ひいてるん?」と、聞いてみます。
そうすると「風邪じゃないけど、寒いねん・・・」と彼女は答えます。
いくら、教室の中が冷房ガンガン効いていたとしても、夏まっさかりです。
さすがに、冬服は着ないでしょう!
白いブラウスの制服の中で、彼女の冬服姿は、ちょっと異様です。

(自律神経失調症かな?)と考えて、
「どういう風に寒いの?」と尋ねると、
「足が、水につかったように冷たくって・・・」と言います。
とたんに、ヒヤッとした冷気が、私にも伝わります。
さらに「毎晩、毎晩、金縛りに合って、すごく怖い」と続けます。

彼女の話は、こうです。
彼女は、進学クラスにいるので、毎晩受験勉強をしていました。
夜、勉強が終わると、就寝するのですが、決まって金縛りに合い、
このところ、ヒドくなってきていて、金縛りの最中に、
頭の上で、ザワザワと人の声がしたり、付けてないのにステレオの
スイッチが入り、いつも聞いている音楽が大音量で流れたりするらしいのです。

そして、その音楽、旋律は同じでも、歌詞が全く違うものに
なっているらしいのです!!

で、「どんな歌詞なの?」と聞いてみます。
「それが、えんえん、“西へ行くと””西の方には””西が”と
西西と繰り返してばっかりで、歌詞らしいものは・・・」とのこと。
となると、純粋に、こう聞きたくなりますよね?
「家の西には何があるの?」

すると、しばし考えて、彼女は答えます。「蔵がある」

私しゃ、街中で育っているので、蔵のある家は、そうそうお目にかかれません。
内心(すげ〜)と思います(^^;

(蔵の中に何かあるのかな?)

彼女の話を聞きながら、私の視界が、ボヤけてきます。
立派なお庭、松に椿に、これは何の木?よく手入れされています。
白い壁の高い蔵、蔵の中には、とりたてて、目に付くものはありません。
(広いし、デカイ家だな〜。映画みたい)なんて、考えながら、蔵を後にし
先へと進みます。
ところが、そのヴィジョンの中には、本来、在るはずべきものが
見当たらないのです。私は懸命に探します。庭を走ります。
鳥瞰図のように、家の上空から探します。

蔵の割に真新しい雰囲気の家、不自然な形、妙な出っ張り・・・。

そうか!だから、「足が水につかったよう」になるのだ!!!

現実に引き戻された私は、こう尋ねました。
「なあ、家、改築しなかった?」

「増築したけど・・・」と怪訝な顔をされます。
「その時、井戸埋めなかった?」
「ああ、そういえば、井戸壊した」
「もしかして、その井戸の真上の位置に、部屋がない?」
「あ〜・・・そうそう!なんで分かるの?」
「その、井戸が原因や! だから“足が水につかったよう”になるんや!」

どうやら、きちんとした段取りを取らずに、井戸を埋めて建て増しして
しまったらしいのです。

「部屋は1階?2階?」
「2階」

2階でこれなら、地上に最も近い1階は、もっとひどいんじゃないのかな?

「じゃあ、○○さんの部屋の真下は、誰の部屋?」
「お兄ちゃんの部屋」
「お兄ちゃんは、何も言ってないの?」
「お兄ちゃんは、大学が東京だから、こっちに住んでないねん」

なるほど、それで、ダイレクトに彼女に来るわけだ。

さて、私は、単なる、かわいい女子高生(だから、殴らないで〜)
私には、何もできませんし、これも、ただの憶測にすぎません。
幸い、始業のチャイムが鳴りました。
「ん〜、私には、何もできないから、とりあえず、家の人に相談して、
御払いするか、井戸の件を何とかするか、してみたら?
後、気休めかもしれへんけど、部屋に塩盛っておくとか・・・」と
これだけ聞いておいて、アドバイスらしいアドバイスもできないまま、
彼女を見送りました。

次の日、友達がまたバタバタと走り寄ってきます。
「なあ、鳥野、なんか、しんどくない?」
「いいや・・・」
「○○が、話聞いてもらったら、急に金縛りがなくなって、
寒くもないねんて!だから、鳥野が、連れて帰ったんじゃないかって・・・」
「私は、別に何ともないよ」

友達の後ろに居た、○○さんは、
「ほんとに、ありがとう。助かった」と、お礼を言ってくれました。
(いや〜、私何もしてないんですけど・・・
でも、可愛い子にお礼言われるのって、くすぐったいな〜)
その日から、○○さんは、白いブラウスの夏服になっていました。

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