【怖い話】引き込む者

みなさん、どうも。
SINです。
以前にも述べましたが、私は世間で流布している幽霊の概念には否定的です。
幽霊というのは、思念の残滓のようなもので、それが何らかの形で場所や物に記憶され
ているのだと考えています。
FDに記憶されたデーターのようなものですね。
で、再生機能を持つ人が、それを見たりすると考えています。
血族の死を感知する話は非常に多いのですが、やはりシンクロし易いのでしょう。
ところが、これでは説明出来ない話があったりします。
今回の話は、流石の私もただ怖いとしか言えません。

M県の海水浴場に、海の守りの女神像があります。
これが建立されたのは、ある事件がきっかけです。
昭和30年7月28日。
ここで泳いでいた45人の女子中学1年生のうち、36名!が水死するという痛ま
しい事件がありました。
全国的に報道された事件ですから、興味のある方はデーターベースを検索して下さい。
この遭難事件の原因ですが、海が荒れていた訳ではないのです。
生き残った9名の内5名が共通の発言をしています。
「かたまって泳いでいた友達が次々と波間に消えていきました。あっけにとられてい
ると、水面をひたひたとゆすりながら、黒い塊がこちらへ向かって来ます。それは何
十人もの女の人で、防空頭巾をかぶり、もんぺをはいていました。逃げようとすると、物凄い力
で足を引っ張り水の中へ引き込みます。女の人は皆、白く無表情な顔をしていました」
助かった女生徒も肺炎などを併発し入院しています。また、浜辺でこの有り様を目撃した人に
も、亡霊を見た人が多数存在しています。

・・・何をどう言えばいいのでしょうか? ただ、凄惨でやりきれない思いがします。
さて、実は私の弟がこの浜辺で恐ろしい体験をしているのです。
ワゴン車に男4人で弟はこの海岸に海水浴に行きました。
この海岸を最初から目標にしていたのではなく、無目的な旅行をしていた時に、たま
たま海水浴場が目に付きました。
まだ、夜だったので、車で仮眠を取り、明日泳ごうということになりました。
弟はこの時、海上に多数の人魂を見ていましたが、友人達は見えぬようなので、黙っていたそ
うです。
夜明け前に尿意を催し外に出ていた友人が皆を起しました。
海に妙な物があると言うのです。
外に出てみると、夜明け前の空は淡い紫色で、海面は鈍い銀色をしています。その海面沖から
かなり離れた所になにやらキラキラ光るものがあります。
「・・・ビニール袋かな?」
誰かが言いました。確かにビニール袋が光を反射しているように見えなくもなかったそうです。
だが、まだ陽は昇っていません。
「手だ・・・」
真っ先に弟が気づきました。海面から手首から上を出して誰かが手を振っているのです。「溺
れてんじゃねえのか?」「見に行くか?」というのを、弟は押しとどめました。
「馬鹿! あんな遠くにあるのに、なんではっきり手首と見えるんだよ。なんで光ってんだよ」
それで、ようやく仲間もそれが只ならぬ者であることに気づいたのです。
全員、車に戻り酒の力で無理に眠りました。
翌日、騒がしさに目を覚ますと、海水浴場は人で溢れています。
昨夜の事もあり、気味が悪いが、ここまで来て、泳がないのもしゃくです。
深場には行かず、全員離れぬようにしようということで、海に入りました。
股下位の深さのところでビーチボールで遊ぶうち、昨夜の事など忘れてしまったそうです。
そのうち、仲間の一人が突然助けてくれと叫び、沈んでいきました。
昨夜の出来事で、悪ふざけしていると、最初は思ったそうです。
皆、泳ぎは達者だし、そんな水位で 溺れるはずもありません。
「馬鹿やってんじゃねえ!」と言いましたが、その男は本当に溺れているように見えま
す。どれどれと見に行くと、その男はすでに頭が水の中まで沈み込み、手だけを上に出しても
がいています。
弟達は顔色を変え、その友人を引き上げようとしましたたが、逆に凄い力で大の男4人が引き
込まれそうになりました。弟が海の中を見たところ、砂が巻き上がり友人を包み込んでいます。
弟はその砂の中に確かに無数の手を見たと言ってます。
自分達だけでは助けられないと思い、弟達は助けを呼んびました。
側にいた刺青の集団が助けに来てくれたそうです。結局、大人8人がかりで、ようやく助け出し
ましたが、溺れた友人の体は、腰まで海底の砂の中に埋まっていたそうです。
「なんや! これはなんや!」
刺青の怖い人達は叫んだそうですが、弟達に答えられるはずもありません。
一体、どうすれば、大人の体を海底の砂の中に引きずり込む事が出来るのでしょう?
少なくとも私は分かりません。
ちなみに、この海岸、第2次大戦中の空襲の死亡者二百名余りを埋めた場所だそうです。

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