【怖い話】 樹に生えた髪


 みなさん、どうも。
 SINです。
 以前、私が住んでいた家の側には墓場がありました。
 大昔からある墓地で、ちょっと前までは死体を焼いていたようで、釜と煙突のある家
屋も残っています。今はこの家屋は墓参りの人の休憩所です。
 で、この家屋の側には葉が一枚も生えない古い木があります。
 多分、百日紅だと思うのですが、私は一目見た時からこの木が嫌いでした。
 まがまがしいのです。
 普通、植物の気は優しいものですが、この木は尋常ではない「まがまがしさ」があ
りました。
 この土地が墓地にされたのも,この木のせいではないかと思っていました。
 妻子にはあの木には近づかぬよう言い渡しました。
 ある日、長男が迷子になり交番に保護されました。
 連絡を受けて私は交番へ自転車で急ぎました。
 近道するには、その木が面している道路を通らねばなりません。
 その木の下を通り過ぎた時、ばさりと顔に何かがかかりました。
 自転車を止めて確認すると、それは髪の毛の束でした。
 木の枝から一房の長い髪の毛が生えており、それが私に巻き付いたのです。
 私は髪の毛を払い除け、印を切ってから、息子を迎えに行きました。
 帰り道はその木の側は避けました。
 後日、ひとりで確認した所、木に髪の毛など生えてはいませんでした。しかし、一ヶ
月程の間、体のどこかに細くウエーブのかかった髪の毛がからみつき難渋しました。
 妻への言い訳に苦労しました。(パンツの中にも入っているんだもん)
 これはこれで、別の意味で怖い話になりますね。

 

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