【怖い話】 読経



 みなさん、どうも。
 SINです。
 A君が居間で家族とTV見ながらくつろいでいると、仏間から凄まじい音声で読経
が響いて来ました。
 が、A君以外それに気づいた様子はありません。
 他の人には見えぬ物や聞こえぬ物を見聞きしてしまうのは常のことです。
(ああ、またか・・・・・)
 嘆息してA君は席を立ち、仏間に向かいました。
 壮年の小太りの僧侶がいました。
 汗を流してお経を唱えていますが、正気の様ではありません。
「なにをしている」
 居間の入り口で立ったままA君は尋ねました。
 僧侶は振り返りもせず「悪霊払いをしている」と応えます。
(悪霊はお主だろうに・・・・・)
 苦笑する思いがしました。
 A君は「ならば、手伝おう」
 そう言うと、僧侶の読経に合わせて、きちんとお経を心中で唱えました。
 三度唱えたところで僧侶姿は煙のように消えました。
 近所の僧侶が借金苦に首吊りをしたのを知ったのは翌日の事でした。

「でも、なんで家に出たのか分からねぇ。家は檀家でもないんだぜ」
 そうこぼすとA君は杯を空けました。
「そりゃ、おまえ・・・・・」
 酒をついでやりながら、私は応えました。
「すがれる奴が近所にお前くらいしかいなかったんだろうよ」
 A君は苦虫を噛み潰したような表情になりました。
「苦労だねぇ〜」
 肩を叩いてやりました。

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