【不思議な話】 家庭訪問
健康法師さんのお話。
それは私が嶋繩w生をしていたときでした。解剖とか、何かでそれはもう猛烈に
忙しかったのです。
夜遅く帰ってきて、疲れて服を着たままベッドに寝込んでウツラウツラとして
いると、玄関先から、ヒタ、ヒタと誰かが歩いて来るような音が聞こえました。
そうしたら、なんと、部屋の入口のふすまがズズズと動いたような気がして、
私は、まさか、泥棒がやってきたのか!と思って戦慄しました。
とにかくこういう時は、慌ててはいけない、と思って私は寝たふりをしている
と何やら部屋の中に何とも言えぬ存在の気配を感じ、これはどうも普通ではない
と思いました。部屋にはレポートとか何かで紙がそのへんに整理されないまま
散らかっていましたが、この入ってきた(?)と思われる者は、その紙の上を
踏みつけて歩いているようでした。私はだんだん緊張してきました。そうした
ら、なんとこの御仁は私の寝ているベッドの上に上がって寝ている私の周りを
2、3周しました。彼(?)が歩くとそちらの側のマットレルが重さで傾くの
が感じられました。
これはもう絶対寝たふりしていて関わりあわぬほうがよいと思って、私は我慢
して、この御仁がいなくなるのを待ちました。
果して、後で玄関の鍵を見るとしっかり施錠してありまして、私は「さっきの
御仁は誰だったんだ?」と不思議がることしきりでしたが、せめて強盗の類で
なくてよかったよかったと思って一安心しました。もしかしたら、解剖の献体
の主が「おめ〜! もっと勉強せーよ!」というんで私の後を追って「家庭訪
問」にでも来たのだろうか? と思ったのです。それはそれ一回きりでした。