【怖い話】 人形の家

 健康法師さんのお話

私が昔南カリフォルニアの某医学部にいた時、内科の実習をしていた時にそこの
主任教授の家のパーテイに呼ばれました。その教授の奥さんは実はやはり医者で
産婦人科をしていました。その子供達もそれぞれ整形外科とかその他の方面に進
んでゆきました。この家に一歩入って圧倒されたのは、家の中のいたるところの
飾り棚や階段の踊り場などありとあらゆる所に人形がズラリと並んでいるのです。
しかもその人形と言うのはその辺のトイザラスとかシアーズのようなデパートで
売っているようなああいう大衆普及版の安物プラスチック大量生産品の人形では
なく、高さが40〜70センチ程度、大きいものは1メートルに達する、精巧な
手作りの人形であり、平均価格は一体あたり700ドル程する(一番高いものは
4000ドルだった)ものです。安物の人形とは違い、それは一つ一つに悩まし
い表情を持っていて、重量感も迫力もあります。それぞれが個性を持っていて当
然ながら、どの一つとして同じ人形はありません。目は、ガラス球のものもあり
ますが、中には実際に人体に義眼として使われるものがそのまま使われているも
のもありました。皮膚は当然布ですが触ってみると温かみを感じるものでした。
髪の毛やまつげは本当の人間の物を使っているものもありました。着ている綺麗
な衣装はみんな手作り、というか背の低い子供に着せてもそのまま使えるような
ものでした。こんなのが、ざっと数えただけで軽く100体はあって、リビング
ルームのガラスケースの中にあふれていたりベッドルームの一角を床から天井ま
で占拠していたりしたのです。私はこの「超高級人形」のコレクションに圧倒さ
れ、ただもう「す 凄い」と思ってたまげるばかりでした。中にはどれほどの年
代が経っているのか、煤けたような顔の美しい人形もあり、触ってみましたが、
逆に人形に悩ましい目で見られているような気がしました。

「こんなに沢山の人形に囲まれて、いつも見られている様な気がして落ちつかな
くなるのではありませんか?」と聞くと、奥さんは、「いいえ、いないと寂しい
ような気がするんです。誰もいないとき、会話がないと寂しいでしょ」というの
でありました。 (^=^;


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