【怖い話】 盛り塩
みなさん、どうも。
SINです。
近所の神社でお祭りがありました。
ふとん太鼓で知られる祭りです。
月見祭と言い、本来は旧暦のお月見の日に行われていたそうですが、今は新暦の土
日で行われます。
大変多くの出店が出て人出も凄いものがあります。
初日は近所の子が太鼓を叩くと言うので、子供を伴いビデオ撮影に行きました。
子供達は出店の中でもお化け屋敷が新鮮に見えたようです。
私が幼い頃と代わらぬ代物です。
掘っ建小屋を組み、入り口で呼び込みをしています。
中のオバケも人の扮装です。
子供達は入りたがったのですが、その日は撮影やら挨拶があったので、翌日出直し
ました。
翌日気づいたのですが、昨日の人出で崩れていたお化け屋敷の入り口の盛り塩が、
きちんと直されています。
ああ、やはりこういうのには気を使うのだなと思いました。
いざ、入るとなると子供達は怖くなったようで、私も一緒に入ってくれとせがみま
す。
入場料は馬鹿になりません。
自分たちだけで入るよう言い聞かせ、私は小屋の裏手に回りました。
そこは人出がありませんから、煙草が吸えます。
先客がいました。
初老の老人です。
どうやらこの小屋の主のようです。私と娘達とのやり取りを聞いていたようで「兄
ちゃん、入ったらんでええんかい?」
そう言って微笑みます。
話して見ると、何十年もこの近辺の祭りのお化け屋敷は彼が仕切って来たそうで
す。お化け屋敷は敷地も取るし、出し物が出し物ですので、境内のはじを割り当てら
れるのだと言っていました。
ふと盛り塩の事を思い出し、「きちんと塩を盛るんですね」と語りかけると、老人
はしばらく無言で私を見つめました。
「分かるだろ? あれは縁起物じゃねぇ」
「なにかありましたか?」
「昔な、俺がいない時に盛り塩しなかった奴がいる。祭りが終わってもそいつだけ中
から出て来ねぇ。捜したら隠れ場所で倒れてやがった。白装束の背中が血塗れよ。慌
てて脱がしたが、背中には傷ひとつねぇ」
「その人どうなりました?」
「・・・・・やめたよ」
老人は煙を吐いた。
折良く娘達の泣き声が大きく響いた。
老人は立ち上がると、テントの裾をめくった。
「行ってやんな」
礼を言って中へ入った。