【奇妙な話】 砂かけ
みなさん、どうも。
SINです。
祖母の話は、幼い私には興味深い話です。当時、マンガで妖怪に興味を持っていた
私は祖母に尋ねました。「妖怪なんか見た事ない?」
「妖怪?」祖母は怪訝な顔をします。
「ほら砂かけ婆とかいるじゃない」
そう水を向けますと。「婆かどうか知らないが、砂かけはいる」そう言いました。
当時、その村落の墓場は山の中腹にあり、そこに墓石が並ぶのですが、まだ、土葬
でしたので、遺体は山の頂上あたりに埋めたそうです。
墓場から頂上へ至る道には小屋がありました。遺体を一晩置く場所で、死後硬直を
取る場所です。子供ながらに鬼気を感じたのを覚えています。
で、高野街道は丁度この頂上の裏手にあたるのです。
「一人で歩けば、上から砂をかける者がいる」
祖母はそう言います。
「誰なの?」そう尋ねると「見ない」と祖母は答えました。
砂をかけられても上を見てはいけない。それはその辺りに暮らす者のルールでし
た。
ルールには意味があります。それを破れば時として死に至る危機が在ることを誰も
がわきまえていたのです。
祖母もまた、砂をかけられる事を不思議と思わず、ただ無視してきたのです。
なんだか気落ちした私の様子を見て、祖母は言いました。
「おろちなら一度見た」
裏高野の草原にそれはいたそうです。樽のような太さの胴で、草原一面にとぐろを
巻いていて、体色は虹色であったそうです。
おろちは顔を上げ、当時、少女だった祖母を見たそうです。
祖母はそのまま失神しました。
高熱が一週間続き、医者も匙を投げた所、当時、高野山の僧侶であった曾祖父がど
こからか曼珠沙華の花を持って来て、祖母の枕元に飾ったといいます。
それで熱は下がったそうです。