【不思議な話】 握手
Kさんのお話
私が中学生だった頃の話です。
この年代の子供たちにありがちな事ですが、科学では割り切れない不思議な事柄に
惹かれ、私や私の父方の従兄弟達は心霊やオカルトにとても興味がありました。小
さい頃から良く一緒に高野山に登ったりして、あの不思議な空間の中で何か感じる
ものがあったのかもしれません。少なくとも高野山に登るようになってから日本の
歴史に興味を持ち、般若心経の写経をはじめた私はそうでした。
私と同じ年の従姉妹は「キューピッドさん」にはまっていました。
彼女の学校で流行っていたのは、文字盤に手を乗せるものではなく、「自動書記」
でした。彼女たちは自分が想像で作り出したキャラやあこがれの人がペンに降りて
くるのを待って、楽しく筆談していたのです。私はあんまり気が乗らないなりに、
そんな従姉妹に付き合ってそれを横で眺めていました。
従姉妹の家に親戚が集った時の事です。例の如く「キューピッドさん」をはじめた
従姉妹に異変が起こりました。急に苦しみだしたのです。彼女は私達に円になって
彼女を取り囲んで力を貸してくれるように要求しました。その時「霊感兄弟」であ
る従兄弟達の兄が叫びました。「参勤交代の行列が見える!飛び出した女の子とお
じいさんが斬られた…」。どうやら、彼女は”拾ってしまった”ようでした。霊感
兄弟の弟の方も、幻視した事柄を次から次へと喋ります。従兄弟達の手の甲に青い
血管がT字型に浮き出し、従姉妹は「悪魔の紋章だ」と恐怖の表情を浮かべます。
私は何も見えない質です。でも、そんな光景を見ていてブチッと切れました。
「オマエら見えるくせに何で好きなようにされとるのや!」という思いにも似た衝
動が私を突き動かしたのです。カッと仁王立ちした私は力を込めて「そんなん治し
てやるわ!」と従兄弟達の手をグイッ、グイッと力を込めて順番に握っていきまし
た。普段大人しい私のそんな様子に従兄弟達は呆気に取られていました。何故自分
がそんな行動をとったのかは今でもよくわかりません。「…どうしたん?」とされ
るがままになっている彼等に私は「キリストの力とでも思えば」とぶっきらぼうに
告げたような記憶があります。
そのうち怪異は納まりました。しばらく私は厳しい男のような口の利き方をしてい
て、回りの従兄弟達が居心地悪そうにしていたのを覚えています。
しかし、その怪異の中で、霊感兄弟の弟の方が幻視で告げた事が、その数年後私の
身に再び怪異を呼び寄せる事になるのです。