【怖い話】 手招きする幽霊1
Sさんのお話
弟から聞いた話しを文章にしました。少し前のことで細部が曖昧&私の文
章ではあまり怖くないですが、これは本当にあったお話しです。
とある海辺。
弟とその友人は砂浜から突き出した堤防に腰掛け、他愛のない会話を楽
しんでいました。バイクの話し、アルバイトの話し・・・。
その会話の切れ目に、弟がふと時計に目をやると深夜の2時前です。こ
こに来た時間が遅かったとはいえ、ついつい話し込んでしまいました。
「もう2時やわ、そろそろ帰ろか?」
「せやなぁ」
二人は立ち上がり、提防を戻りはじめました。
少し先の車を止めてある場所は街灯の明かりに浮かんでいますが、二人の
まわりには月明かりしか届いてきません。
弟がふざけ半分に怪談話を始めました。
「これはホンマにあった話しなんやけど・・・」
辺りはシンと静まりかえり、弟の低いかすれた声だけが響びきます。
友人はどちらかというと臆病な性格で、話しを聞いているのかいないの
か、弟の少し後ろをゆっくりとした歩どりでついてきます。
弟の話しが佳境に入って来たその時、友人が足を止めました。
弟は自分の話しが怖いのだなと思い、どんな顔をしているのかと話しつ
づけながらゆっくり振り返りました。
ところが友人は話しを聞くどころか、ほうけた顔で横を向いてしまってい
ます。
弟も自然とそちらに目を向けました。
そこには下に降りていく細い階段があり、その向こうには背の高い草が
風に揺れています。そしてその草の間から、軽く越えられそうな細い小川
のようなものが見えました。
友人を見ると、今にもその階段を降りていこうかとしているのです。
この時、突然弟の身体に電気が走ったようなゾクゾク感が襲い、全身に
鳥肌が立ちました。こんな感覚は今まで味わったことがありません。
弟は無意識に友人の袖を引き、その行こうとする先を見ました。
風に揺れる背の高い草。その中で小川の向こうから女の人が手まねきし
ているではありませんか。
「!!!」
弟は目を疑いしまた。ですが、確かに見えます。
草に隠れ上半身だけが覗き、肩の下まである髪は濡れているようで顔を
かくしています。そして風に揺れる草の動きにあわせてゆっくりと手まね
きをしているのです。
・・・これは夢か?
弟はそう思わずにはいられませんでした。
なぜならその女の人の姿が半透明に草と重っているのです。しかし全身に
走るゾクゾク感が夢ではないことをいやでも弟に判らせます。
弟の目が女の人に釘づけになります。白いワンピース、年齢は30才く
らい、割と整った顔立ち。一瞬にしてそれだけのことが感じとれました。
弟は友人を強く引き戻しました。そして女の人から目を反らさず、車の
方へ歩き出します。目を反らせば終わりだと漠然と感じたのです。
この間、弟はずっと怪談話しをつづけていました。見えている事実を認
めたくないのです。だから話しを止めるわけにはいかないのです。友人は
引かれるまま力なくついてきます。
そして二人は車のある明るい場所にたどり着きました。
車に乗り、弟は今見えたものが友人にも見えたのか聞きました。が、友
人はそんなものは見ていないといいます。ただあの場所がどうしても気に
なったのだというのです。弟は帰途、ずっと友人に自分が見たものを話し
て聞かせました。もうあのゾクゾク感はありません。友人に話す内、弟は
幻覚でも見ていたような気になってきました。
後日、二人はまだ日の高い内に同じ場所に足を運びました。その場所を見
るためです。さすがに昼間は何も感じません。
ところが、先日そこにあったはずの小川はそこにありませんでした。二
人は青ざめた顔を見合わせました。そこには小川の変わりにコンクリート
で固められた幅の広い溝がありました。深さは3Mくらいだったそうです。
以上です。下手な長文、ご容赦下さい。
この場所は後日にσ(^^)も弟に連れて行ってもらったのですが、そのお話
しはまた今度。