【奇妙な話】 ゼリービーンズ
Sさんのお話
その日、私は東京で飲んだくれて、上司と一緒に横浜へ帰るタクシーの中でした。
上司は以前にも聞いた、「この辺に俺の大学があったんだぁ...云々」という話を
(これが5回目ぐらい)していました。私は「はい、はい」と相づちを打ちながら、
視線は窓の外の夜空を眺めていました。車は首都高速道路をひた走っており、かなり
高い所を走るので、夜空が良く見えます。
私は空にオレンジ色の月を見つけて、それがタクシーを追いかけててくるのをぼんや
りと眺めていましたが、しばらくすると少しおかしな事に気づきました。
月がゼリービーンズの様に変形していくのです。誰かが指で丸い月を押しつぶしてい
るように...。でも私は月が雲に少しずつ隠れていって、そういう風に見えている
と思い、そのオレンジの月を目で追っています。
すると...突然月はかき消すように..いや急に小さくなって見えなくなったよう
に消えました。目を凝らした私はそのオレンジの月が出ていた辺りにはあると思って
いた雲が全くなかった事に気が付きました。私は何を見ていたのだろう...。
隣のシートでそろそろ眠くなってきたらしい上司に今見た事を話すと
「東京は空気が汚いからぁ、そういう事は良くあるんだ、ムニャムニャ、ヒック」
と言うことでした。いやぁ、東京ってそんな怖いところだったんですねぇ。