【怖い話】 将軍塚の女

 10年以上前の話です。8月の熱帯夜の夜だったと思います。蒸し暑さから
かそいつが友人二人と夜のドライブに行ったのです。京都市内を南から北へと
ぐるっと周り何の気無しに将軍塚へ行こうと言うことになったんだそうです。
九条山から登って適当な空き地に車を止めて缶コーヒーを飲みながら一服付け
ていた時、遠くの方に小さな赤い光が見えるのです。こんな所に他にも人が来
て煙草を吸っていると思って話をしようと近づいていくと光が二つになりまし
た。ぼそぼそと話し声も聞こえます。それがどうも独り言のようなので少し気
味悪くなってきたのですが二人連れなので恐る恐る近づいていきました。

 耳を澄ますと道から外れた林の中から声がするのです。それも女の人の声が。
友人曰く。「その時は心臓が口から出るかと思った」そうです。草をかき分け
進んでいくと声がはっきりしてきました。「・・・でやる」「・・してやる」
「・るさない」その時です。もう一つの音が耳の奥に響きました。「コオンッ
コオオンッ、コオオオンッ!!!」。恐怖の余り立ち上がった友人がこちらを
振り返った女の人と目があってしまいました。その人は白装束に鉢巻きを巻き
煙草と思ったのは鉢巻きに挿した二本の蝋燭だったのです。

 「誰だあーー、見たのはああーーーー」。目は血走り、涎を垂らして近づい
てきます。もう限界です。わき目もふらずに逃げると追いかけてくるのです。
それも想像以上に早く。車で待っていた友人に早くとけしかけて急発進。しか
し方向転換をしている間に声が近づきます。漸く発進。最後に聞こえたのは「
どうしてくれるーーーっ」という雄叫びにも似た声だったそうです。

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