【奇妙な話】 中隊長殿
私の友人にTというのがいます。聞くところによると、彼には前世の記憶が残
っているそうです。「俺はどうも南方戦線で戦死したようだ。」等と、とんでも
ないことをさらりと、しかも真顔で言います。
彼は大学生となりあるクラブに入部したのですが、そのクラブには南方で共に
戦った上官にうり二つの先輩が居たそうです。Hはその先輩には大変可愛がって
貰ったそうです。
さて、時は流れ、先輩の追い出しコンパの日がやってきました。Hは4次会ま
でつきあって、先輩と二人で深夜のミナミの街をトボトボと歩いていました。恐
らくアルコールが廻っていたのでしょう。Hは普段なら決して口にしない一言を
先輩に言い放ちました。
「中隊長殿?」
先輩はにやけた顔で「皆まで言うな。」と言ったそうです。