【奇妙な話】 菅笠

 Pさんのお話

このお話は、私が子供の頃に母がくりかえし話してくれたものです。
母のお母さん(つまり私の祖母ですが、私が生まれる前に亡くなって
いたので残念ながら私は会ったことがない)の不思議な体験談です。

それは、夏の盛りの頃の話です(昭和二十年代)。
お祖母ちゃんは、午前中に知り合いの家を訪ねました。
そして午後の暑い日差しの中、来た道の田んぼの畦道を
黙々と歩いていたのです。
しばらくすると、なにやらチャプチャプと水の音が聞こえてきました。
見ると田んぼの真ん中あたりで菅笠が動いています。
「ああ、お百姓さんが雑草取りをしてはるんやなぁ、この暑い中、
大変やろなぁ。」と歩きながらもその姿を眺めていました。
が、何か妙だと思えてきたのです。
稲越しに菅笠とともにほんの少し絣(かすり)の着物も見え隠れしている
ように感じるのですが、どう見ても胴体が無いように思えます。。
なんだか気になったお祖母ちゃんは先の畦道を右に回って違う角度で
見ることにしました。菅笠はそれらしく移動しているのですが、
やっぱり体があるようには思えません。
そうして「おかしい、おかしい」と思いながら、田んぼを回りをウロウロして
いる内にお祖母ちゃんはハッと気づきました・・・

おみやげにもらったカゴの中の”蒸かしイモ”がない!

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