【奇妙な話】 鈴の音と赤い石

 Tさんのお話

私は、父親の仕事の関係で、小学生の時、毎週末と長期の休みには福井県遠敷郡上中町
へ行っていました。
ここは、名田庄村とも近く(私達は“なたんしょ”って呼ぶんですが)小浜から車で、
約30分程の所です。

家の周りには民家も無く、山と田圃に囲まれた所でした。
外灯も無いので、家の外は真っ暗です。
ときどき、山からは、鳥か何かの気味の悪い声が聞こえてきます。

私は、家でHちゃん(地元の子)と一緒に遊んでいました。
家の中は、私とHちゃんだけでした。
TVでは NHKの「6時のニュース」をやっていましたから、夕方頃の事です。

突然、窓の外から「チリン・・・チリン・・・」と鈴の音が聞こえてきました。
その後「ドンドン」という太鼓の音も聞こえてきました。
「チリン、チリン、ドンドン・・・チリン、チリン、ドンドン・・・」
音は御囃子のようにも聞こえます。

私は Hちゃんに「今日は何かお祭りでもあるの?」と訊ねましたが、
Hちゃんは首を振ります。
「チリン、チリン、ドンドン・・・チリン、チリン、ドンドン・・・」
音はだんだん近づいてきます。どうやら家の庭で鳴っているようです。

私とHちゃんは、窓のカーテンを開けおそるおそる外を覗きました。
家の中の方が外よりも明るい為、外がよく見えません。
手で覆いをして、窓の外を見ると・・・・・。

赤く光る二つの目(のようなもの)だけが、池の向うに見えました。
しかし、不思議と恐怖心は感じませんでした。

ところが、その後、部屋の中には、赤いキラキラ光るルビーのような石が
二つ落ちていました。
涙型のカッティングまで施されてある石は、子供の心を捉えるのに充分でした。
私とHちゃんは、一つずつ石を分け合い「これ絶対、大事にしようね!」と
約束しました。
私は、この石がさっき見た「赤い目」の化身だと感じました。

しかしHちゃんは、その日の帰り、Hちゃんのお母さんの車の中で石を落としてしまい
必死で探したけれども、見つからなかったそうです。
私は、その話を電話で聞き、悲しく思ったのですが、私も大阪へ帰る車の中で、
石を無くしてしまいました。


あれは一体何だったのでしょう???

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