【怖い話】 座敷童
Tさんのお話
○○荘にて
宿につくと、そこは私たちのイメージとは幾分違っていました。
それほど山の中でもなく、宿も見た目は普通の宿で、噂に聞く
“いかにも…”といった感じはありませんでした。
番頭さんが、部屋に案内してくれました。
渡り廊下をまっすぐいった突き当たりが噂の槐の間です。
テレビなどでは、この部屋を紹介するときにぞっとするだの、
空気が重いだの、いっていましたが、私たちには、温かく、
自分の部屋のように懐かしさを感じました。
床の間には、数々の座敷童子へのお礼のおもちゃが置いてあり、
座敷童子伝説について説明が書いてありました。
・ 座敷童子伝説の部屋
「この部屋はこの家の奥座敷ですが、槐の柱を使っておりますので、
通称「槐の間」と呼んでおります。
数百年の昔から男の子の霊がこの部屋に棲みついてこの家を護って
くれていると伝えられております。
大禍時に座敷童子に遭ったりその気配を感じた人は幸運に恵まれるといいます。
違い棚に置かれた物はそういう体験をした人々からのお供え物です。
・手を振れないでご覧下さい。
私たちは、座敷童子のためのおみやげ(ウルトラマンティガの人形)
を床の間に飾って、お茶を飲んでくつろいでいると、
娘が自分のティガの人形を童子ちゃんのティガの横に
「童子ちゃんにかってあえるの(かしてあげるの)」
といって並べました。私が部屋を出ている間のことです。
しばらく、娘のたーはテレビを見ていましたが、突然、
立ち上がって自分のティガを取りに行き、
「だめ〜。あえるんじゃないの。か〜しゅぅ〜の〜!!」
床の間に向かって騒ぎだしました。
「喧嘩すんじゃないよ。貸してあげなさい!!」
と主人は言ったそうですが、娘は
「あえる(あげる)じゃな〜い!!か〜しゅ〜のぉ〜!!!」
の連発だったそうです。
食事をし、温泉にも入り、(女湯から男湯がのぞける!!)
その晩のこと。
よく寝ていたのに、ふと夜中に目が覚めてしまいました。
その後なかなか寝付けず、主人の方を見ると、主人も目を覚ましたらしく、
目が合いました。
「なにか、感じた?」
「なにも。パパは?」
「ん〜。ちょっとな。金縛って、布団の上になにか重みがあって
しばらく座っていたみたいなんだけどその時にすー(下の子)が、
むっくり起きて、やべぇっ。泣く!と思ったら、
その重みの乗っている方を向いてうひゃひゃひゃひゃと笑って
はしゃいですぐにパタンと寝た。
その後布団の周りを歩き始めて、ほんで、お菓子置いてあるのを
カサコソいじって、ぴたぴた歩きまわって屏風の方に消えてった。」
それから、だんだん日が昇り、朝になって、
主人と娘は私がガッツリ寝ている間に、散歩に行ってきたようです。
帰ってきて主人が言うには、童子の形をした雲を見たといっていました。
山と山の間に丁度、朝陽が昇りかけていて、それを背に童子形の雲が
浮かんでいたそうです。
陽を背にしているので、顔や着物のところに上手い具合に陰影がついて、
はっきりわかる形だったとか。