【奇妙な話】 読み方
Tさんのお話
お盆前の日曜日に高野山へ行ってきました。
うだうだとした山道をぐねぐね曲がって門をくぐるといきなり街が
開けています。
背の高い、見上げると首が痛くなるほど高い木々があちこちに植わっています。
かなりの人出というのに、静かな静かなところでした。
奥の院に行くのに、一の橋から歩いて行きました。
途中には、歴史に名高い家々のお墓が建ち並んでいます。
戦国時代にその名の聞こえた大名達のお墓は、大きな石でできていて
中には苔むした墓標もありました。
夏休み故かお盆が近い故か、時々お墓参りをする方も見えて
ふと見ると、ものすごく旧家の方だったりして思わず歴史を
感じてしまいました。
途中、「北極家」と記された墓標がありまして、相方と二人
これは何と読むと話題になりました。
何故か「きたごく」とか「きたきょく」「ほくごく」としか
頭に浮かばず、それを口にしながら前を通りすぎようとしたとき、
誰かが袖をグッと引っ張ります。
少し前を歩いていた娘が後方にいる祖母のところに走りよったので、
その頭が触れたと思いました。
けれど、袖を引っ張られたとき反射的に振り返りましたが、娘はすでに
3メートルほど離れた祖母のところにいます。私達の回りには誰もいません。
あれ?と思ったとたん、「ほっきょく」と頭のなかに響きました。
「あ、そうか、ほっきょくだ。」
思いつつ見回すと、そこは通りすぎようとした「北極家」の墓標の正面。
漢字を読めないおばかな私に、北極家のご先祖様が教えてくれたのでしょうか?