【奇妙な話】花火その後

 foxさんのお話


自己紹介代わりに、かつて慎さんがアップしたお話、花火【奇妙な話】のつづきなどを少々、
夜景をみて一騒ぎした一行は目的地の生駒遊園地に到着しました。
 さきほどまできれいな夜景を楽しめるほどに晴れ渡っていた空模様が怪しくなり、あたり一面に霧が発生する始末です。
 遊園地に入ってまず一行が向かったのは、ループコースターでした。
 こんな霧の中で乗る物好きがいるのかと思いきや結構な人達が並んでいます。
 一行はお約束の最後尾に陣取り相変わらずはしゃいでおりますと、ほどなく発車となったのです。
 霧の中に吸い込まれるように進む乗客を乗せたコースター。2輌先は霧にかすんで見通せない情況はなんとなく嫌な光景でした。その後、霧の中を嬌声に包まれながら失踪するコースターが停車し。ほっとしながらなぜか皆一様に無言で出口に向かいました。その後、ループコースターは濃霧のため運転中止となりました。
 遊園地の入口付近の広場まで出てきたところで、誰かが「おいSがおらんぞ」と言い出しました。「ループコースターの出口からはまっすぐやから迷うわけがないやろ。便所にでも行ってるんちやうか」と皆も別に心配する様子ではありませんでした。しかし、20分経過してもSは戻ってきません。「ほんまに迷子になったんちやうか?」さすがに気になり。場内放送で呼び出しをかけてもらいました。しかし、Sは現れません。「もう一度コースターの出口のほうまで行ってみよう」場内にはまもなく閉園のアナウンスが流れ始めました。
 一行がコースターの降り口まで後わずかなところまで来たところ、霧の中をSが走り出てきました。「お前らどこ行ってたんや、何ぼ探しても見つからんかった。」とSは言います。Sの髪の毛は雨の中を歩き回ったようにぐっしょりと濡れていました。皆が、これまでの事情を説明するのですが、どうも時間経過の感覚がずれているようです。
 誰かがぽつりと「まるで神隠しじゃな」。その後、Sがしばらく大学に来ず、後日高熱で寝込んでいたことを一向は知ったのでした。

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