【不思議な話】夢枕の使者
私の友人には巫女体質の方が多い。
普通に暮らしているのに神様から伝言や使命を与えられるのだから、たまったものではない。
これもそんな巫女体質の友人Tさんのお話。
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眠っている。眠りは浅い。まわりが昼間だと言うことも、部屋のどの辺であると言うこ
とも理解できる。外からの声も聞こえる。しかし、体は熟睡状態で、動かそうとしても
動かない。無理に動かそうとすると相当の力を要する。声も出ない。無理に出そうとす
るとうめき声になる。
無理に起きても起きられないから、そのまま寝ていることにする。すると、右の方か
ら足音が聞こえてきた。床を静かに歩いてくる。
その足音が近づいたとき、伸ばしていた手でその足首を掴んだ。細い足首。まだ5,
6才くらいの子供のような足首だった。
その足首の主が何かを話す。いや、話していると言うよりも、直接脳に語りかけてく
ると言った感じ。
「巫女様のご準備はできておる。おまえ達、もっと巫女様が気持ちよくなるようにおし
。」
すると何かが体中をマッサージし始めた。そして、足首の主が言う。
「では、見ていただきます故。」
そうして、見知らぬ風景が見え出す。まったく知らぬ場所。
その家は、田舎の家のようだった。あまり新しくなく、でも生活の匂いはした。
母屋なのか。もしかしたら離れなのに、一軒家、と言うやつかも知れない。でなけれ
ば、その水神の位置はおかしい。
一間幅のコンクリートで固めたアプローチをゆくと、右手にちょっと大きめの小屋(
物置)がある。タマネギなんぞがぶら下がっていて、この家は農家なのかな?と思った
りした。
5,6メーター行くと、その家の玄関がある。真ん中に一間幅の玄関、それを挟むよ
うにそれぞれ二間幅の部屋があるようだ。向かって右側の部屋は、外に縁側がしつらえ
てある。その縁側の下が不自然にコンクリートで固められていた。
よく見ると、石を埋め込まれたように置いてあって、その頭が見えている。コンクリ
ートで固められている周りには大きめの石ころが隙間なく縁取られていた。
そこは昔、池か何かだったのではないか。そんな風に思えた。
じっと目を凝らすと石には字が刻み込まれている。「水」という字の上だけが見えて
いた。
「ここに昔井戸があって、溢れる水を溜めておく池を作っていたはず。何のためにふさ
いだか知らないが、水神はお怒りである。ふさぐならふさぐで手順を守るように。きち
んと祀れば、この家の傾きは止まるだろう。」
そう思ったが・・・。
「なるほど、では、そのようにお伝えなさい。」
と、言われても、誰に伝えるんだと心の中で問いかける。
「この風景を見て欲しいと言った人にですよ。」
そんな人が誰か知らないし、誰に頼まれたわけでもないが・・・。
足首の主は、そういうと、立ち上がって立ち去るようだった。
伸ばしていた手で何かを掴むと、それは数珠のような、いや、違う。玉簾のような。
寄り合わせた布でできた紐を一定の間隔で結んである。そんな感じのものを掴んだ。ど
うやらそれは髪飾りのようで、髪の毛と同じくらいの長さがあるようだった。
ふと意識に入った足首の主の姿。ひょっとして子供ではなく、年老いた老婆かも知れ
なかった。
手の中に玉簾の感触を残し、足首の主は去っていった。
で、不思議だったのは、それからしばらくして、ネットで知り合った人の日記に、こ
の夢で見た家のことが書かれていたことです。
掲示板でのやりとりだったので、本当に彼女が行ったところと私が見た夢の家が同じか
どうかは定かでないけれど・・・。
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と言うお話です。
ちなみに、玉簾の髪飾りというのは、平安時代(と思われる)の斎王の髪につける
髪飾りと同じような感じでした。
以上のようなお話である。私は只の夢だとは思わない。