【怖い話】無縁さん
羅門さんからの投稿。
私の母が亡くなったのは今年の三月のことでした。
あまり苦しまずに逝けたのがせめてもの幸いでした。
さて49日の法要の後、私と妻は仏間の隣の部屋で寝ていました。
なぜだか知らないけれど、深夜に唐突に目が覚めました。
金縛りにかかっていました。部屋にはうっすらと煙のようなものがあります。
金縛りは初めてではありません。
こういう時は足の親指からもみほぐすように念じれば、なぜか解けるものなんです。
この時も、それで解けました。
起きあがり布団の上で、安堵の吐息をつくと、老人のしわがれた声が聞こえます。ぞっとして、声の出る方を見ると妻の方です。
妻も金縛りにかかっているのか、気をつけの姿勢で固まっています。
目を見開き白目の状態で、老人の声で呟いているのです。
これには腰が抜けるほどに驚きました。怖いなんてレベルじゃありません。
老人は何か同じことを繰り返し言っています。
聞きますと「小野○○朗」「小野○○子」と名を絞り出すように苦しげに呟いているのです。私は何故かこれはご先祖様に違いないと思いこみ、「ちゃんとご供養しますから、○○(妻の名)から離れて下さいと、手を合わせてひたすら拝みました。
三十分程で妻は元に戻ったのですが、永遠にも思われる時間でした。
翌朝、父にこの話をしましたら顔色を変えました。
母の兄弟にその名の者がいるそうです。
ただ母の実家は跡継ぎがおらず途絶えた形になっていました。
「向こうの位牌も持って来てるはずなんだが?」
父は首を傾げます。
お坊さんを呼んで過去帳とかを調べていると、このお二方、広島の原爆で行方不明になっていて戦没者名簿にも入っていなかったようです。
「戒名がついとらん」
お坊さんはそう言います。
戒名をつけて再度供養をする必要があると言います。
でないと無縁さんになって祟ると言うのです。
即座にお願いしたのは言う迄もありません。
今年のお彼岸には念入りに供養してもらいます。
でも、戦災の混乱で無縁さんになってしまった仏様もきっとたくさんいるのでしょうね。 なんだか辛く思えます。