【怖い話:人混みの中で】

Rさんのお話

えっと以下は数年前予備校の先生に聞いた話です。

 その先生はもとヤン、もと暴走族、ボクシングとヌンチャクのたしなみあり、さら
に逸な体験もたくさんあるよという濃い人物でありました。「人間も幽霊も、まあた
いがいのモンは気合でなんとかなるもんや」とうそぶくようなタフな人でしたが、そ
の先生があれは怖かったと語ってくれた話です。しかも授業中に☆

 ある夏の昼下がり、ミナミの街をひとりで歩いたそうです。
その日は休日でうっとうしい程の人ゴミでした。
その時、ふと前方から来る一人の人物に目が止まりました。その人物は地味な色合い
のスーツを着たややくたびれた感じの中年の男性だったそうです。生身の存在です。
外見的にはなんら特別ではない、それなのに一目みた瞬間足元から立ち上る悪寒と共
に目を離すことができない。
「人間ではない、しかも半端なレベルの存在ではない」と直感したそうです。
周りの人々はその男性に注意を払う様子もなく、その恐ろしさに歯の根もあわないほ
ど体が震えているのは自分一人。でも足は止まらない。
極限にきたすれちがいざま、
「ようわかったな」と頭に響いたそうです。後ろも振り返らず走って逃げ去ったそう
です。

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