【不思議な話:中華店の空間】
イサナさんのお話
イサナさんがお母さんと、神戸バスツアーに行った時の事だ。
昼食は神戸の中華街の店舗。
ツアー客全員がワンフロアーに入れるほど大きくない店で、イサナさんとお母さん
を含む8人は1階を横切る形で店員さんに案内されて3階に通された。
このお店では、客はエレベータでしか移動できない作りになっていた。
3階では8人掛けのテーブルで食事を楽しんだそうだ。
料理は美味しかったがイサナさんのお母さんのお皿だけ模様が入っているのが気
になった。
店員の「ありがとうございました」の声に送られて8人はエレベータ前に来た。
エレベーターは6人乗りなので、イサナさんとお母さんの二人は次のエレベーターを
待った。ほどなくやってきたエレベーターに乗り1階を押して下りると、エレベーターは3
階・2階・1階と下りて行き、1階について扉が開いた。エレベーターを下りたイサナさん
とお母さんは目を丸くした。
そこは先程、横切った1階のお店ではではなかったのだ。窓からの眺望も5階くらいの
高さがある。広いアジアンレストランであった。
イサナさんは外にでれない恐怖からパニックを起こしかけていた。
すると店の従業員がやってきて、全てを察した表情で「ありがとうございました」と深々
と頭を下げた。
イサナさんはますます訳が分からなくなった。
ちょうど一人の客がエレベータに乗るところだったので、慌てて同乗した。エレベーター
は何故か3階を示していた。
エレベーターは一階に下りた。
そこは最初のお店だった。
同乗していた男の姿はかき消えていた。
イサナさんは、あの何もかも察したような表情の店員の事が気がかりでならないと言っている。
イサナさん、帰って来れてよかったね。