【奇妙な話:神鳴り】
高野龍神スカイラインは雷の名所でもあった。
晴天で気を良くして走っていると、一転にわかにかき曇り、土砂降りと雷の嵐にあったりする。
そういう時、ライダー達は近くのログハウスへ逃げ集まり、天気の回復を待つ。
ある日のこと、やはり土砂降りと雷の嵐に遭った私はログハウスへ逃げ込んだ。同じように逃
げ込んだライダー達が四、五人いた。
ライダー同士なじむのも早い。
「酷い雨だねぇ〜」などとだべっていると、ピカって来た!
どどーんと言う地響きがして視界が真っ白になった。
目の前5メートルの所に雷が落ちたのだ。
皆、一分近く言葉を失った。それから「すげぇ〜」「俺、初めて見た」「バイク乗ってたらやばかっ
たねぇ〜」などと口々に話す内に天気は回復して皆、散会した。
後日、東京の友人と会ったので、その話をした。やはり走り屋で霊感持ちである。電気関係の仕事をしていた。
「以前ね、龍神峠で落雷に遭っちゃって・・・・」
「ああ、あれは恐いでしょ?」
「どーんと音がして地面が揺れて、目の前が真っ白になっちゃって」
「うんうん。そうなるよねぇ〜」
「でさ、視界が戻っても、眼の前に白い光の柱の残像が電信柱みたいに立ってて」
「・・・・・」
「おーんって音も耳の底に残ってさ」
「それ雷じゃないです」
「はい?」
「・・・・あんた、エライモン見ましたね」
友人は真顔で言った。
私が何を見たのかは未だに頑として口を割らない。