【怖い話】手
まささんからの投稿。
西暦2000年。
晴れて大学を卒業し、私は社会人一年生となっていた。
某大手住宅メーカーの営業職に就いていたので、日中はもっぱら外回りをしていた。
ある日、いつもの様に外回りをしていた時の事である。
季節は夏。
ちょうど今位の時期であった。
暑さとうまく営業が出来ない事に苛立っていた私は
近くにある大きな神社へ涼みがてら気分転換に行こうと思い立った。
時間は午後二時過ぎ頃であったと思う。
神社の入り口付近にある大きな木を背にして
幼馴染の Y 君に電話していた。
数分ほど他愛も無い話をしていた時の事、ダラリと下げている私の左手の手首を
一瞬であったが、後ろから右手で掴まれた感触をはっきりと感じた。
すぐに後ろを振り返ったが、そこにあるものは大きな木だけ。
Y 君に今あった事を話したが信じていない様子だった。
途端に風がザワザワとざわめき始め、木々の葉がこすれ合い、
まるで山が叫んでいる様な声ともつかない音が辺りを支配し始めた。
恐怖に駆られた私は 急いで車に戻り、その場を立ち去った。
あの時、手首を掴まれた感触は五年経った今でもはっきり残っている。