【怖い話】顔
まささんからの投稿。
大学時代に友人(K 君)から聞いた話です。
K 君は実際に見た事はないのですが、よく“感じる”のだそうです。
そんなK 君の下宿は大学から少し離れた場所にある古いアパートでした。
部屋の中は玄関から入るとすぐにガラスの引き戸があり、
その向こうに六畳ほどの広さがあるものでした。
どうしてその部屋にしたのか聞くと、
「安かったから」だそうです。
始めは何事も無く暮らしていました。
しかしある夜、テレビを見ながら一人でビールを飲んでいた時の事、
ふいに入り口にある引き戸が「ピシャ!」と激しい音を立てて
開きました。
瞬間、部屋の空気が凍り付いて、ふいに「何か来る」と感じたK
君はその時、
「絶対に見てはいけない」と思い、すぐに目をつぶりました。
そして、何かが近付いてきた気配を感じました。
最初は分からなかった様ですが、しばらく目を閉じていると
それが「顔」であると感じたそうです。
実際に目を開けて確認した訳ではないのですが、
K 君にはそれがはっきりと分かったのです。
その首から上だけの顔は、K 君の顔の左上に静止しており
しばらくすると真正面にきました。
その時の事をK 君はどうする事も出来なかったと言っています。
ただただ「早く消えてくれ」と念じるだけだったそうです。
時間にして五分ほど、そんな状態が続いた後、
その気配は突然、消えてなくなりました。
とりあえずほっとしたのですが、それでも目を開ける気になれず、
手探りで布団まで向かい、目を開ける事なくそのまま眠ってしまいました。
翌朝、何事も無く目が覚めてほっとしたのですが、
その後、K 君は原因不明の高熱を出して入院してしまいました。
原因不明の高熱で入院したK 君は、大部屋に入れられたそうです。
しかし何故か同じ部屋の入院患者達は K 君が入ると次々と
退院されたそうです。
しばらくすると大部屋は K 君一人となっていました。
幸い私は入院した経験がないのでよく分かりませんが、
病院に入ると昼間に寝てしまい、夜はなかなか寝付けないそうです。
しかし今は大部屋に自分ひとり。
誰に気兼ねする事なく夜遅くまでベッドの電気をつけて本を読んだりして
快適に過ごしていました。
そんなある夜、いつもの様に夜更かししていた時の事、
突然、部屋の入り口から窓の方向に向かって誰かの歩く足音が聞こえました。
「えっ!?」と思いました。
ドアが開く音がなかったからです。
足音は窓際でピタリと止まりました。
ベッドの周りにはカーテンを敷いてあるので部屋の様子を伺う事は出来ません。
はっきりしている事はドアを開けずに入って来られる何者かが
今、窓辺にいる事だけです。
K 君は読書を止め、足音にだけ神経を集中させていました。
そのまま数分経ち、何事も無いので落ち着きを取り戻して「気のせいか?」と
自分に言い聞かせようとした瞬間、窓際の何者かが今度はドアに向かって
歩き始めました。
ゆっくりと自分のベッドの前を通り過ぎ、今度はドアの前で
ピタリと止まりました。
でもドアを開ける音はありません。
そして間違いなく気のせいではありません。
K 君は電気をつけたまま、頭から布団をかぶり朝までガタガタ震えていたそうです。