【怖い話】海面に浮かぶもの


 みゅうみゅうさんの投稿

 随分前の話になりますが、政府の青少年交流のイベントで、船で南半球に旅した時の
話です。
 東京を出航して程なく、第二次世界大戦の激戦地であった硫黄島のそばを、通過する
ときに慰霊祭が行われました。
 御存じない方も多いと思いますが、硫黄島というのは、島の形が変わるほど激しい砲
撃を受け、日本軍が玉砕した島です。

 それまでは青空が広がっていたのに、慰霊祭が行われる1時間程前から急に雲が広が
り、どんよりとした空になり、急激に海の色が暗くなりました。
 甲板にメンバーが整列し、慰霊祭が始まりました。
 メンバーの中に本物の住職がいたので、その住職により読経が始まり、海に花が投げ
入れられ、皆で黙祷をささげました。
 霊感のほとんど無い私でも、その時のねっとりとした異様な空気で、全身の毛が逆立
つ感覚は今も忘れる事ができません。
 そのときふと見ると、近くにいた友人が、今までに見た事が無いほど表情をこわばら
せ真っ青になっていたのです。
 無事、慰霊祭が終わり、30分ほどで、それまでの天気がウソのように綺麗に空が晴
れ渡り、海の色も元の明るい青に戻ってから、彼女が見たものを語ってくれました。
 読経が始まり、ふと海面を見ると、見渡す限り、びっしりと男性の死体で海が覆われ
ていたそうです。(水死体は、うつ伏せか、仰向けかで、性別が判るそうです。)当時、
女性の兵士はいませんでしたからね・・・。
 彼女は、神社の宮司の親戚で、忙しい時は巫女さんのアルバイトをするような人なの
で、そういう幽霊などには相当慣れっこになっている体質の人だったのですが、あまり
の数の多さに倒れそうになったそうです。
「みんな、お経を聞きたかったんやね〜・・・」とつぶやいた彼女は、とても哀しそう
でした。

 今まで行った場所で、一番強烈だったのは、ソロモン諸島のレッドビーチ(これも、
大戦の激戦地で、日本兵の血で真っ赤に染まったので、その名がついた)ですが、ここは、
友人達の話のバリエーションがありすぎて、手がつけられないです。沖縄なんて比じゃ
ないです。”日本に帰りたい!”霊の大群なのですから・・・。
 霊感のほとんど無い私でも、そこに足を踏み入れて、半日寝込む歯目になりました。

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