【不思議な話:狐に化かされた?】

 みゅうみゅうさんのお話。

 これは、曽祖父のまだ江戸時代だった頃のお話です。

 九州の山奥の、小藩の武士であった曽祖父ですが、ある日帰りが遅くなり、外は
すっかり暗くなっていました。
 帰り道を急いでいたのですが、ある場所で前を見ると、見上げるような大入道(注
1)が道の真中でこちらを睨んで仁王立ちをしています。
”これは、むじな(狸)か狐が化かしているに違いない!”
と思ったので、キセル(注2)を取り出し、ゆっくりとたばこの葉を詰めて、火を点
けました。
 わざと大きく息を吸い、出来るだけ火を大きく熾してから、そのキセルを手にした
まま、まっすぐに大入道の方に向かって歩き出しました。
 すると、まさに大入道とすれ違おうかという場所まで来たとき、”ふっ”とその大
入道はかき消えました。
 数歩足を進めてから立ち止まり、振り返りましたが、やはり何も見えません。
”やはり人を化かそうとしていたか!”
と考えていたその時です。近くの道端の暗がりから、一人の男が転がり出てきて、
『旦那様〜!』
と叫んで、腰のあたりにしがみついてきました。
”まだ、人を化かそうとしているのか!?”
と曽祖父は身構えましたが、キセルの火を近づけても消えないので、よくよく話を聞
いてみました。
 すると、近くにすんでいるその男は、曽祖父の前にこのあたりを通りかかり、化か
されてしまい、恐ろしさのあまり動けなくなって、長い間道端でじっと蹲っていたそ
うです。
 その時、キセルの火が見えたので、助けを求めて飛び出したのでした。
 その後、二人は無事家に帰ることができました。

(注1) 坊主頭の化け物・・・らしい?!
(注2) 煙管・・・刻みたばこを詰めて吸う、昔の喫煙具 時代劇を見てね。
 
子供の頃、初めてこの話を聞いた時は、”キセル?””大入道?”でしたので、一応
(注)をつけました。

こんな肝の据わった曽祖父が、私は大好きです。

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