【怖い話】 ラップ音

 山やさんのお話。

 横浜の両親の家は、私が高校入学と同時に引っ越してきた場所です。以前は同じ横浜市内の別の場所に
住んでいました。丁度バブルの前に分譲されたマンションでした。壁紙などは結構いい加減な仕上げでしたが、
欠陥住宅と言うほどではありません。もちろん引っ越し当時は新築です。
 さて、引っ越しのドタバタも落ち着いた頃、はっきり何時だと覚えていませんが、やたらと家鳴りがすることに
気がつきました。夜、自室で勉強をしていると「ぱきっ、ぱきっ」と天井の隅で音がします。私たちの家は最上階
なので、上の住人が暴れているわけではありません。また、天気によって鳴るわけでもなさそうでした。音が出る
箇所は一定しませんが、よく鳴ることだけは確かです。あまりに頻繁に鳴るので、建物とはそういうものだと思っ
ていました。
 新潟に来て、安アパートに住み始めると、夜が妙に静かです。人が出す音以外、家鳴りはしません。
 一ヶ月ほど前、行きつけのアウトドアショップにクライミングをしに行ったところ、片隅にあったゴミ箱のあたりで
「ぱこっ」と音がしました。隣に座っていた、取り憑かれやすい仲間(本人談)が、
「ラップ音だよね?」
と尋ねてきました。かねてより私はここが「出る」と店員から聞いていたので、
「そうだよ」
と短く答えました。あちらの方々がいらっしゃるところで怪談話をする気になれませんでした。
 そして、
「そういえば昔はこんな音を毎日聞いていたな〜」
と考えていました。

 今でも同じマンションに両親は住んでいますが、たまに訪ねても、現在は怪しい気配も無ければラップ音も鳴りません。

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