【怖い話】山の怪

 ジュラルミンさんからの投稿。

 こんにちわ。ジュラルミンです。
 私は山の散策が趣味です。ただ、普通に登山するのでは無く、あえて獣道とかを選んで
迷子になるのが趣味なんです。(^^;)
 そういう事をしていると、まぁ、ちょっと不思議な体験をすることもあります。
 その中でも特に奇怪だった話です。
 その山に入るのは二回目でした。前回はあまり奥まで入らなかったので、かなり奥まで
入る事にしました。周りの樹木が苔むしていて、本当に人が長らく入っていないのが分か
りました。(道がない山でも営林署の方なんかが入っているので本当に人気の無い山は珍
しいのです。)
 木々の隙間を歩くうちに、急に開けた空間に出ました。
 丸く開けた空き地です。周りは木々で覆われているのに、その空間には雑草すらありま
せん。赤茶けた窪地の真ん中にそれがいました。
 腰まで届く蓑を頭から被り顔も見えません。太い足一本で立っています。私の気配を感
じたそれは、蓑の隙間から右手を出して、掌にあるものを示して来ます。掌にあるのは金
塊でした。
「こよ。こよ」(来い来い)と木と木とをこすり合わせるような声で言います。
 金塊をちらつかせて、誘って来ます。
 怖いと思いませんでした。純粋にその金塊が欲しくなりました。前へでようとした時に
お守りがリュックから外れて落ちました。鈴がちりんと鳴りました。ごうと空気が渦巻き
ました。一瞬目を閉じて、再び開けると、その窪地に私一人が立っています。周囲には何
故か桃の実の香りが漂っていました。流石に怖くなり即刻戻りました。
 あれは何だったんでしょう? 金塊を受け取ったらどうなったのかを考えると、今でも
怖気が立ちます。

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