【怖い話】悪魔

 Kさんからの投稿。

 もう20年は前の話です。
 一人で山辺の道を歩いていると迷子になり
ました。遠くにK電車の電線が見えていたの
で恐くはなかったです。
 獣道をかきわけて、線路の土手まで出まし
た。これで線路沿いに歩けば、とりあえず帰
れます。
 でも一駅の間が異常に長いんですよね。
 線路は土手の上にあります。私はその土手
伝いに、汗を拭きながら(初夏でした)歩き
ました。
 思わず目を疑い、眼鏡を外して目をこすり
ました。
 全長5メートルはある悪魔が体育座りして
いるのです。
 恐くはありませんでした。
 悪魔の肌は燻銀のような色で、きちんと蝙
蝠の羽を持っていました。頭に髪はなく、二
本の角のようなものがありました。
 顔は分かりませんでした。
 悪魔は体育座りで顔を膝に埋め、更に羽根
で体をくるんでいたのです。
 その時、頭に若い男性の声が響きました。
「ほっといてくれ。疲れているんだ……」
 悪魔でも疲れるんだと驚かされました。
 私は悪魔を遠巻きにして、その前を通り過
ぎて、無事、駅にたどり着けました。
 爾来、怪異は体験していませんが、疲れて
る悪魔に何故か同情しています。

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