【不思議な話】戒壇巡り
山やさんからの投稿。
長野の善光寺にお参りしたときの話です。
早朝にお寺に着いたので、本堂に入ったらちょうど朝のお勤めの時間でした。せっかく
なので、内陣まで入らせていただき、お勤めに参加しました。
一通りお勤めが終わった後に、お寺の方の案内に従って、ご本尊と結縁させていただく
という戒壇巡りへと向かいました。
内陣に座っていた人たちの後について、祭壇の下の回廊へ下っていきます。ひと一人半
の幅の回廊は、灯りもなく真っ暗ですが、目を凝らすと最初の曲がり角までは見通すこと
が出来ます。二ヶ所ほど空調設備もあり、案外現代的でした。そこを、前の人に触れるか
触れないかの距離で歩いていきます。念仏を唱えながら歩む人もいました。時たま暗がり
の中で進む方向に迷うのか、人の流れが止まることもあります。ひとときの真っ暗闇の中
で、何かを感じると云うことも無く、人の後に付いて出口まで来てしまいました。
一回戒壇巡りを終えると、他の人はそのまま内陣を後にします。私はといえば、お寺の
方が何も言わないことをいいことに、他の参拝客がいなくなるまで四角の回廊を巡り続け
ました。
四回目を巡り終え、出口の階段を上ったところ、後ろの暗闇から「ぎっこんばったん、
ぎっこんばったん」と金属の擦れる音がしました。階段の下を振り返り、しばらくその音
を聞いていましたが、何の音か見当がつきません。空調のファンはそれまで静かに回って
いましたし、私の後からついてきた人はいなかったはずでした。
首を捻りつつ、五回目の戒壇巡りをしようとして、入り口に書かれていた戒壇巡りの説
明を改めて読みました。その説明文によると、回廊の途中に「秘仏の錠前」があり、それ
に触れると仏様と結縁が出来るそうです。また、廊下を歩くときに壁に触れながら歩きな
さいとも書いてありました。
それまで私はあまり壁に触れずに歩いていたので、次はきちんと案内通りに戒壇巡りを
することにしました。
すると、真っ暗な回廊の途中で柱とは違う手触りの物を見つけました。手でなぞり、握
ってそれを動かすと「ぎっこん、ばったん」と音がしました。どうやらそれが秘仏の錠前
だったようです。
善光寺のご本尊に「いい加減にしろ」と言われたみたいで赤面しました。