【怖い話】天井から
慶さんから、幾多の努力の末、投稿されたお話です。
悲しいお話です。
今の地に越してきてから、土地の影響を受けてか少々敏感になってしまった時期がありま
した。その時に私が体験した出来事の一つで、今でもあの時現れた霊の姿をはっきりと思
い出すことができます。
私は低血圧で寝起きが悪いのですが、その日は早朝突然ぱっと目が覚めてしまいました。
その時、仰向けだった私の目には当然部屋の天井が見えます。が…その天井に見慣れない
ものが。寝惚けていた私は最初それをはっきり認識することはできませんでした(汗)
「…蜘蛛?」
とつぶやいたもののそれにしては大きい…というか色が…
「肌色?」???
よく見ると体中大きな瘤のようなものがありボコボコですが、色は肌色で手足がきちんと
付いている…
「赤ん坊!?」
そうなのです。私の目に飛び込んできた物体は、瘤だらけの赤ん坊だったのです。その赤
ん坊が天井に手足を付けてハイハイしていたのです。つまり逆さまの状態で移動していた
わけです。
私が赤ん坊だと認識した瞬間、その子はこちらを振り向きました。
「!?…」
顔中瘤だらけで鼻がありませんでした。鼻腔らしき穴すら見当たりません。私はといえば、
一瞬驚きはしたものの「これじゃ呼吸できないじゃん」とか結構落ち着いてました(笑)
今思い返せば見た目も強烈だし、逆さまで天井に張り付いている姿はもはや人間とは思え
ない姿ですが、何故か怖くはなかったのです。
なんとなく「身内だ」と思いました。根拠はありません。なんとなくです。
私が、その赤ん坊をもっと良く見ようとすると、彼(なんとなく男の子だと思っただけで
す)は赤ん坊に似つかわしくない「ニヤ」という卑屈な笑顔を残して窓の方から外へ出て
行き消えてしまいました。
それから何日か後、母方の実家で祖母に会う機会がありました。
祖母が近所のお寺に行くというので私も(珍しく・笑)付いていく事にし、その道すがら、
この体験を何の気なしに話したのです。すると祖母が驚いて「慶に言ったか?」と突然言
うので、話の見えないアホな私は「何を?」と訊き返しました。
祖母は昔、体中出来物だらけで腫れ、鼻のない赤ん坊を産んだ事があったそうです。
医者に「この子は鼻がないから呼吸が出来ない。このまま死なせてしまいましょう」的な
事を言われ、延命はせずにそのまま死なせてしまったそうです。
近所のお寺では水子供養をしており、祖母は自分で御地蔵さんの赤い前掛けを編んだ事も
あるそうです。今回お寺に行くのも、亡くなった子どもの供養の為だと。
昔は今より奇形の生まれる確率が高かったというのも祖母から聞きました。
私の見た赤ん坊が本当に祖母の子かどうかは、何の力もない私には分かりません。でもな
んだか切なくなり「多かったとはいえ、一つの命が消えてしまったという事を、当たり前
のように思ってはいけないよね」と私がつぶやくと、祖母は「そうだねぇ…」と何かを思
い出したように、少し悲しそうに言いました。