【怖い話:幽霊もどき】

 山やさんからの投稿です。

 ずいぶん前に見た夢のお話です。

 いつの頃か私の住んでいるアパートの部屋は、戸口の上あたりでたまに物音がするようにな
っていました。もちろん、上の住人の生活音ではありません。
 さて、その晩寝床に入って暗闇に目が慣れるくらいの時間が経った頃、戸口の上の方角から「ぱきっ」っと物音が響きました。私はいちいち反応するのも面倒だったので、構わず布団にくるまっていました。
 すると、いつもとは様子が違って音源が足音のように寝床に向かって進んできます。
 私はと言えば、相変わらず布団にくるまって「こいつ、何をするんだろう?」と窺っていました。
 そいつは枕元の右肩まで来ると立ち止まりました。私は普段殆ど壁を枕にしているような状態で寝ているので、気配は壁の内側にめりこんでいます。どうやら枕元から私を見下ろしている、そんな様子だと感じました。
 薄く目を閉じて幼い頃に鍛えた「寝たふり」を続けていると、やつれ気味な白装束の女性が夢(?)に現れて、
「…ディッシュ、ディッシュ、…」
とつぶやき始めました。結構怖い形相をしているのですが、言っていることがアレなので、聞きながら思わず考え込んでしまいました。一呼吸置いた後に、「ディッシュ=深皿=ごちそう=喰っちまうぞ!」だと思い至りました。私は、「めんどくさいから逆に喰らってやろうか?」と思いながら、それ以上悪さをするわけではないと判断したので、そのまま朝まで寝てしまいました。
 朝起きて改めて考えると、昨晩の体験は金縛り初体験だったはずなので、身体が本当に動かないかどうか確かめておけば良かったと後悔しました。

 その後、その手の人々が寄りつきやすい山岳会の後輩(本人談)と、仲間の女の子にこの話をしたところ、後輩は「オレも見た!」と騒いでいましたし、女の子の方は感覚が変な方に働いてしまったのか別の体験をして怖い思いをした様子だったので神社のお守りをプレゼントしました。

 余談ですが件の幽霊もどき、出てきた姿は知り合いの女性のイメージでしたが、どこからどう見ても偽物臭く、本物の幽霊と考えるにしても少し違った気配をしていました。
 なにせ、彼女とは文字通り匂いが違いましたから。幽霊の偽物かどうかは単なる私の勘なので正確かどうかは保証致しかねます。

 余談ついでにもう一つ。金縛りの誤爆を受けた後輩も結構怖い思いをしたようですが、男なので放ってあります(笑)。

※多分、はぐれ式ですね。ほっとくと妖怪になりますが、人の精気を奪います。
  山やさんの部屋の隅に何かがいると、私もそれは感じます。電話をしていると黒い靄の細長い物がいるのは感じます。
  でも、そこに縛られているかのように微動だにしないので、害は無いと判断して、私は彼がそれを認知しているかを確認
  するにとどまり、何も手出しをしていません。
  今回のそれは、明らかに別物でしょう。言霊をしかけるのに「デニッシュ」とは笑えますが、それでは山やさんに効きますまい  。山やさんが気づいているかは、知りませんが、彼は恐らく金縛りに遭うことはないでしょう。
  私的には、純日本製ではない式を作った人間の末路を考えてしまいます。式の封印もする間もなく息絶えたのでしょうが、
 その最後を考えると多少怖気を憶えないでもないです。自らが取って喰われるような式を作って命を失ったなら、その式を
 はぐれ式には出来ませんからね。どこかの祠に納められていると思いたいですね。山やさんの所まで行くのはしんどいし、お
 金ないものね。

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