【怖い話:じいちゃんの時計】

 りうしんさんからの投稿。その2.

 その年の1月に母方の祖母が亡くなりました。
 3月13日に四十九日の法要を執り行うとのことで、自分達は前の日の3月
12日に田舎へ行く予定でした。
 しかし、自分が部活の送別会で大はしゃぎして帰宅が20時過ぎになったた
め、翌早朝に出発することになりました。

 その夜の出来事です。

 祖父が入院してから、祖母は病院に泊まりこむようになり、自分は祖父母の
部屋で寝ていました。
 中学生の頃は夜中を過ぎるまで起きていることは滅多にありませんでした。
 その日は帰宅も遅かったので、珍しく柱時計の音を聞きました。
 聞きながら、途中からその数を数えました。
 ボーン、ボーン、ボーン……。
「……10、11、12、」

何故か、

「13」
 と、自分はあるはずのない数字を数えました。
(うわぁ、明日は13日じゃん。何か嫌だなぁ)
 と思いつつも、すぐに眠ってしまいました。

 が、すぐに起こされました。
 起き上がりながら、自分は母親に言いました。
「じいちゃん、死んだの?」
 一週間前のこともあったので「危篤?」ではなく「死んだの?」と尋ねまし
た。
 驚く母親の後ろに見える柱時計は、2時前だったと思います。

 祖父は、隣で寝ていた祖母も気が付かない内に、息を引き取っていたそうで
す。
 臨終時間は、推定1時。


 自分は、祖父の代わりに、時計の音を聞きいたのでしょうか。



 そして、その柱時計ですが。
 祖父と祖母の結婚記念で頂いたものだったそうです。
 以来、49年(もうすぐ金婚式でした)。
 戦争も乗り越えて、祖父が大事にしていたものでした。
 祖父が無言の帰宅をした後、夕方。
 バチンッ!と大きな音を立て、柱時計は動かなくなりました。

 その後、修理をしようと思いましたが、一番大事なゼンマイが切れているこ
とがわかり、柱時計は二度と動きませんでした。


 ですが。
 何回かは、鳴りました。
 修理をしようと思って家の中にあった時はぶつかっても落としても、うんと
もすんとも言いませんでした。
 しかし、遂に処分することなり、物置に移動させました。
 自分が、頼まれて物置に何か取りに行った時、ぶつかって落とした途端に、
ものすごい勢いで鳴り出し、それにビビッた自分は驚いて逃げたしたくらいで
す。
 すると、そうそうのことに動じない叔母も、
「物置に置いてから、急に鳴るようになったんだよね」
 と、不思議そうな顔をしていました。


 じいちゃんと約50年連れ添った時計は、じいちゃんと同じく、旅立ちまし
た。

怖い話Index