【不思議な話】唯一神の愛
高校3年生のイブの事、私は深い瞑想に入っていた。
瞑想が深くなると。リアルの現象は意識から飛ぶ。自分の中の小宇宙や世界の深淵との
結びつきに深くのめり込む。こうなると「魔」からの強烈な妨害が入る。対応策は無視し
かない。怯えるなどもってのほかだ。
この時現れた「魔」は格が違った。
「失せろ」と免じるだけでは、毛ほども気もしない。
大きな狛犬の様な体で力強い。顔は黒いドーベルマンとブルドックを掛け合わせた姿で
大きい。四つん這いでその肩は私より高い。念による攻撃は軽々と弾かれる。魔は唸りな
がら頭に直接呪詛を述べる。
「殺してやるぞ。八つ裂きにしてやる。お前は捨て置けん。ここで殺す。禍根を残さぬ為
に」
魔はじんわりと距離を詰める。
これは本当に八つ裂きにされると思った。精神が八つ裂きにされるのだ。リアルで私は
狂人となる。精一杯覚えた術などで抵抗したが、まるでだ。毛の一房も動かない。
「魔には墜ちんぞ」
死を覚悟して、意思を強く持つ。
今まさに八つ裂きにされると言うその瞬間、真珠色の巨大な光球が間に入った。魔は後
に飛び退く、光球の中には身長2メートル程の12枚の羽根を持つ天使がいた。仏教の瞑
想をしていたのに、天使が現れたのには正直驚いた。
魔は怒り心頭に達した様で、凄まじい憎悪の気を膨らまし、「よかろう。貴様もとも八つ
裂きにしてやる」
「なぜ、自ら自らを傷つける? このものに憎悪を向ける理由がどこにある」
「このものを放置すれば、パラディンが増える。問答無用!」
魔は宙を飛んだ。正確に僕ののど笛を狙って来た。右の腕で凶器の様なアギトを受け止
める。力試しの有様になった。天使は止める素振りも見せない。
「噛み切れまい? このものは神の愛を受けている。貴様では手を出せぬ」
神の愛があるなら、この焼ける様な傷みを和らげて欲しい。
「神だと? なんでこんな小物にまで神は助力する?」
「分からないのか? 神は世界を創りたもうた。お前達もまた神の愛を受けて存在を許さ
れているのだ。神は万能でおられる。貴様らを不快と思えば瞬時消し去れるのだ。お前達
は神を罵倒するが、大いなる唯一神はお前達も御子として無償の愛を与えておられる。お
前達が唯一神の広大無辺な愛の境地へ至るのを無限の時を費やして待っておられるのだ
ぞ。神は世界だ。故にお前達も神なのだ」
魔は去った。
僕は神の愛のあまりの広大さに落涙していた、
天使は僕の頭を撫でた消えた。
瞑想中の出来事としては奇異である。
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