【不思議な話】母の想い

 文月さんからの投稿。

これは私の体験ではなく、以前いた会社の同僚のお話です。
私は医療畑(病院じゃないですよ)の仕事をしています。
なので一緒に働くみなさんは基本的には理系の方ばかりで、そういう話はうさんくさーい、
とあまり信じない方が多い環境です。

その時の同僚でOさんという女性の方がいました。
Oさんのお母さんは見つかった時には末期がんで余命半年、といわれたのですが、何とか
手術が出来、結局余命半年が1年生きられたとのこと。
そんな中で起きたお話です。

Oさんには弟さんがいて、Oさんのお母さんが闘病中、弟さんのお嫁さんに赤ちゃんが出
来たそうです。余命宣告からいくと、もしかしたら赤ちゃんが生まれるまでに間に合わな
いかも、という状況だったそうですが、前述の通り、手術が出来て余命が伸び、何とか赤
ちゃんに会うことが出来たそうですが、その後すぐに亡くなられたそうです。

それから1~2か月して、Oさんが「ねぇ、不思議なことがあったの」とお話してくれま
した。
Oさんのお母さんが亡くなられてしばらくしたある日、弟さんご夫婦の家へOさんのお
母さんが来たそうです。
チャイムが鳴り、弟さんが出るとにこにこと嬉しそうな顔のお母さんが立っていたそうで
す。
弟さんは(あ、孫を見に来たんだな)と思い、お嫁さんと赤ちゃんがいる部屋に案内した
そうです。
お嫁さんも「あ、お母さん、いらっしゃい」という感じで、赤ちゃんを見に来てくれた義
母を普通に応対したそうです。そしてOさんのお母さんは、自分の孫を見ながらにこに
こと嬉しそうにしていたそうです。

お嫁さんが「じゃあ、お母さんにお茶でも」と席を立ち、弟さんもふとお母さんから目を
離した瞬間、今までいたお母さんが消えていたそうです。
二人とも狐につままれた気分で、「あれ、今お母さん来ていたよね?」と顔を見合わせて
いたそうですが、ハッと気付いたのです。そのお母さんは亡くなっていたことを。

思い返すと、お母さん、何もしゃべらなかったし、赤ちゃんを抱こうとしなかったよね。
何より、お母さんはがんで亡くなったから最後は痩せてしまってがりがりだったのに、元
気だったころの恰幅の良いお母さんだったね。と。

孫をあんなに待ち望んでいたから、生きてる時はあまり長く会えなかったから、会いに来
てくれたんだね、と話、姉であるOさんに話してくれたとのこと。

そのOさんから私は話を聞きました。
すごく印象に残っているのは、Oさんはバリバリの理系でそんな不思議なことは全く信じ
ていませんでした。
だけど「この世の中に不思議なことってやっぱりあるんだね。」と言っていたことが今で
も心に残っています。

※生前のお母さんはきちんと筋を通す律儀な方だったのでしょう。だから、チャイムを押
して招き入れられる形を取ったのでしょう。
※読者の方には「なんで、死んでいるのに気づかないんだ?」と思う方もおられるでしょ
うが、これだけ筋を通して現れる場合、受け容れる人間も生死の違いに気づかず、ごく自
然に相手の意を汲み対応してしまうものです。
※心温まる良いお話です。
※私は特定指定救急病院に勤務していた事があり、泊まり込みも当たり前の世界でしたが、
壮絶な死を遂げる患者さんが多く、迷う方も少なくありませんでした。環境の違いでしょ
うか? 同じ理系でも殆どの職員が幽霊を信じていました。
 

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