【奇妙な話】道尋ね

 朝子さんからの投稿。

黄昏ていく空を見て、ふっと思い出した出来事です。

前の職場でのこと。
早く仕事があがれた時があり、職場近くに霊場のお寺が気になっていたので立ち寄ってみ
ました。

バスで少し乗って住宅地に降りて歩くのですが、プリントした地図がかなり大雑把な表示
なようで近くまで来ているのに道に迷ってしまいました。

夕暮れの時と閑静な住宅地である為か、人通りはほとんどありませんでした。

道端で困っていると、少し離れた場所で僧侶らしき人達が2~3人いるのに気付きました。

私は道を尋ねようと歩き出して、ある違和感を察しました。

彼らはやや緑がかった半透明色で、生きていない人達でした。
よくわからないのですが、この頃の私は普段では霊が見えません。
(学生時や20代は、よく雑霊を感知してました)

心身のコンディションが悪い時や、何かしら気配を感じて探りを入れると見ることがある
くらいです。

……黄昏時だから、変なのに遭遇しちゃったかな?

と思いましたが、嫌な気配は感じません。

悪い者じゃなさそうですし、なにより道を聞こうにも周りは人は見当たらない。

仕方なく私はやや緑がかった半透明色の僧侶達に、行きたいお寺の場所を聞いてみました。

すると年配の僧侶がある方向を指を指して、「あちらの道をまっすぐ行き、三番目の左道
を曲がって……」と、詳細に教えてくれました。

私はお礼を言うと、彼らは私に合掌して頭を少し深く下げました。
驚き慌てて私も深く頭を下げて再度お礼を言いました。

教えられた通りに行くと、すぐ目的のお寺につけました。

境内はとても雰囲気が良くて広く、近所の方達が散歩をしていたりと付近の憩いの場所に
なっているようでした。

そして境内を散策していると、道を教えてくれた僧侶達がいて、私以外に誰も彼らに気づ
いていませんでした。

幽霊という雰囲気ではなく、とても穏やかで柔らかい気を持っていたので今思えば残留思
念の類かなと思いました。

※この世の者でない者に喋り掛ける度胸には舌を巻きます。
※緑がかった半透明と言うことは、妖怪化した存在だったと思われます。(妖怪にも良い
 者はいます)
※残留思念では、壊れたテープレコーダーの様に決められた行動を繰り返すだけなので、
 この僧侶達は残留思念ではありません。
※この僧侶達は人ならざる者として、改めて仏道の修行をするのでしょう。
※僧侶が妖怪化するのは珍しいことではありません。




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