【怖い話】僧侶と稲荷の話
朝子さんの投稿。
これは私の所属宗派で教訓めいたものとして昔によく話題になったものです。
まだ出家をされて間もない年若い二人の男性のお上人様がいました。
先輩のお上人様と一緒にいろんな在家や相談事にあたるにつれて、稲荷神の祀り事に関し
ての障りがかなり多いことに気付いたとのこと。
ある日のこと。
この二人のお上人様達は用事があり、車に乗りました。
一人は運転を行い、もう一人は助手席に座って、
「やっぱりお稲荷さんは、おっかないなあ」
「本当だよ、おっかないよ。お稲荷さんは」
などと冗談混じりで面白おかしく談笑をして盛り上がっていました。
ちょうどその時。
二人のうちの一人のお上人様が、ふっとフロントガラス越しの道路の先へ視線を向けると、
信号機上に数匹の狐の姿を見つけました。
「おい、あそこ! 狐がいるぞ!?」
「えっ、うわあ本当だっ」
二人がそう話しながら狐達がいる信号機の下を車が通過しようとしたその直後。
運転する車のすぐ脇に信号機の点滅灯部分のみがいきなり外れて、道路にドカッと落下し
ました。
わずかの差で車に当たらなかったので、二人にケガはありませんでした。
そして二人は顔を見合わせて、
「…………(お稲荷さんの)陰口や冗談はもうやめよう……」
と心に誓ったとか。
※狐の障りは祓いにくく、やっかいなケースが多い。何故かと言うと、ご先祖の誰かが現
世利得を祈願して、わざわざ勧請しているからで、狐は契約で七代祀られることになっ
ている。何も知らない子孫が祀りをおろそかにすれば祟る。
※狐にしていれば契約で家に縛られて身動き出来ないので、居心地が悪くなれば、祟るこ
とで、訴えるしかないのである。
※狐の祟りは魂の内側から侵食する腫瘍の様なもので、外科的手法で引き離すと精神に傷
跡を残す。また、祓いに来た者や依頼した親族には物理的攻撃をしかける。狐は使役神
としてのプライドが高いので、悪口にも敏感である。
※狐憑きになった人から狐を祓うには、一般的に杉の葉を大量に燃やし、その煙で燻して
「出て行け!」と憑依された人の体を痛めつけるのが一般的だが、非効率で乱暴である。
※伏見稲荷には稲荷の家系図の様な物があり、全国の狐の名が記されている。これを用い
て狐の名を暴き、再契約するのがスマートな方法だが、狐の専門家でないと中々、名を
暴けない。
※現世利得を願って気軽に狐を勧請する方が多いが、幾ら御利益があろうと、子々孫々ま
で祀り続けねばならぬ覚悟を持って欲しいと思う。正しく祀り続ければ、これほど頼り
になるものはない。
※絶対してはならないのは、狐を使って人を呪うことである。それを専門に行うプロもい
るが、狐を貶める行為であり、呪いは必ず自分に返ってくるからである。
※野狐と言って契約した家系が途絶え、自由になって野良化した狐は悪戯好きである。こ
れと対向するには純粋な霊力勝負となる。より上位の狐の元へ送り返す技が必要となる。
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