【怖い話】巨大な嬰児
又、私事で恐縮である。
新婚当初、大和川の辺の公団住宅の四階に住んでいた。
大和川は当時、護岸工事が途中で、ちょっとした大雨で結界寸前まで水位が上がった。
水位が上がると、大和川は巨大な激流に姿を変える。そうすると、様々なモノが流れて
来る。
どこに生えていたのか分からない巨木が、巨大な蛇の様に流れて来る。
上流に養豚場があるのか? 豚の水死体が流れて来ることも良くある。
ある台風の時はカッパ姿の人が流されて来た。慌てて110番したが、水流の早さは凄
まじく、海の入り江近くで保護された。
そんな訳で、大和川が増水すると、川を眺める癖がついた。
ある日、増水した大和川を眺めていると、水面を覆う膜の様なものがあることに気付い
た。膜はうごめき何かを形作っている。
視点を遠山を見る様に変えると、全体像が見えた。
巨大な半透明の全裸の嬰児だった。
苦しんで泣いている様子だが、鳴き声は聞こえない。嬰児は急流に流されもせず、一定
の空間に像を結んでいる。
とんでもないモノを視たと思った。すぐ、目をそらし、障子戸を閉めた。
あれが何であったのかは、未だに分からない。
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