三輪山探訪記(4)・龍穴神社 平成10年12月19日・20日探訪
(台風一過の三輪頂上の空) |
みなさん、どうも。
SINです。
平成10年12月19日。私たちは公園で嘆声を上げていた・・・・
奈良は飛鳥の山裾に立ち並ぶ団地の側の公 園です。子供たちの嬌声が団地から聞こえま す。それだけ見ればどこにでもある光景でした。 が、その公園の日時計はちと違った。時刻の代 わりに冬至・夏至・春分秋分の日の出日の入り の方角を示しているの です。(誰が見るんだろ?) 皮肉な事にその公園は日が射さないんですが ・・・・・ 公園横手に山への登り口があります。その先に 「益田の磐船」があるのです。」 |
「益田の磐船」
観光ガイドなどでは無視されがちですが、飛鳥の奇石のなかでは最大級のもので
す。縦3メートル。横5メートル。高さ3メートル程でしょうか?
黒っぽい花崗岩の巨大な蒲鉾型の巨石です。上部には70センチ四方の正四角形の
穴が二つ開けられた謎の巨石です。竹内宿禰の墓と言う伝説もあります。
夏至の三輪探索の帰り、PITさんが単独でここを調査していました。私はバイナリー
で写真を送って頂いたのですが、磐船へ行く石畳の階段とその横の石組みなど、相当な
場所に見えました。にも関わらず、「益田の磐船」自体の写真からは霊的なものは感じ
ません。電話でPITさんに確認した所、「磐船自体は何もない(あくまで霊的に)です
が、面白い場所ですよ」との事です。
夏至には縁がなかったのでしょう。私は磐船には行けなかったので、今回は夏至の
宿題として最初に行ってみる事にしたのです。
で、公園横の登り口に入ると急斜面の細い山肌です。
「かなり歩くのですか?」不安げに尋ねるLunaさんに「結構、距離がありますよ」とPI
Tさんが答えます。
最後尾にいた私は首を捻っていました。送ってもらった写真ではまず石畳の階段が
現れるはずです。
疑問に思っていると、先行していたPITさんが杉山さんに「道が違うようです。確
認して来るので、待っていて下さい」と声をかけています。
別の入り口があるのかなと思っていると、PITさんが鳩が豆鉄砲喰らったような顔
で戻ってきました。
「・・・・・この道で良いようです。すぐそこにありました」
言いながらも納得出来ない表情です。
私はPITさんに囁きました。
「階段はどこです?」
「ないんです」
PITさんは苦笑混じりに頭を掻きます。夏至の三輪で自分に起こった事を思い出し
ながら、私は言いました。
「PITさんも誘われていたんですね」
「私とした事が・・・・・」
PITさんは笑いました。
「気をつけましょう」
そう答えて私は歩を進めました。何か危ういものを感じていたのですが、その予感
はあまりに漠として正体が分かりません。後でこの予感が的中するとは思いませんで
した。
実は車を下りた時から、私はこの山の北向かいの山に注目していました。禿げ山に
近い状況で、陽にさらされて坑道の入り口のようなものが見えます。私にはそれが古
墳の石室の入り口に見えるのです。陽にさらされているのに禍々しい気配がありまし
た。
気にかかりますが、先に磐船を片づけてしまおうと言う事になりました。
しばらく登ると左側に大規模な落石で出来た窪地があります。草が生い茂っていて
気の吹き溜まりになっています。
私はPITさんの肩を突っつきました。
PITさんはまず気の吹き溜まりに眉をひそめます。私は落石で露わになった垂直の
岩肌を指さします。
PITさんの表情がすっと冷たく変化します。
「人工ですよ・・・・・」
「そういう場所なのか」
などとひそひそ語っていると、杉山さんと虹<2G>さんが特攻しています。
どういう訳か、私はその場所には近づく気になれません。待っていると二人はやや
興奮した面もちで戻って来ます。
「落ちた岩に鉄の輪が打ち込んであったよ」
杉山さんがデジカメの画像を見せてくれます。
人力ではとても動かせそうにない大きな岩なのですが、そこに銀色に輝くまっさら
の鉄の輪が打ち込まれています。
打ち込まれた部分には亀裂一つ見えません。
一体どういう技術で誰が打ち込んだのか? 何のために打ち込んだのか?
謎です・・・・・
(前回、PITさんが迷い込んだ磐船への道。ここがどこか、心当たりのある方は教えて下さい) | (杉山さん提供の巨石に穿たれた輪。なんの目的に使うのかご存知の方は教えて下さい) |
皆は山道に戻り先を急ぎます。
私は登り斜面を見て、顔をしかめました。
道の中央が大きく凹字型に剔れています。雨で剔れた感じなのですが、そのへこん
だ部分が古墳の石室へ続く道に見えてなりません。
上からPITさんが、「へこんだ所は歩かない方が良いですよ」と声を掛けてきま
す。
女性陣が登るのも見てから、私も右端を登ります。木々の間から向こうの山のぽっ
かり開いた黒い穴が見えます。かすかな頭痛を覚えました。
(なんだかな・・・・・)
私は首を傾げます。全ての配置が意図ありげです。が、何を意図しているのか分か
らない。いや、分かるような気はするのに明確なイメージが湧かないもどかしさがあ
ります。
10メートル程登るといきなり視界が開けて眼前に岩山のように益田の磐船が見え
ます。
みなさん、選りすぐりの逸なメンバーですので、あっと言う間に磐船に群がってい
ます。
私は取り残されるように、その視界の開けた場所にたたずんでいました。
(なんだ? ここは?)
そう思い周囲を見渡します。南西に奈良盆地を見渡せます。磐船はほぼ正確に南北
を示して置かれています。
地脈気脈が妙にはっきり感じられます。その癖、磐船からは気を感じません。
こういうポイントに置かれた岩が気を放たないと言うのは、むしろ異常と言えま
す。
理由の分からない違和感に警戒しながら私は磐船の周りをぐるりと回ります。PIT
さん、虹<2G>さん、修羅さんはすでに磐船の上に登っています。
あ、磐船の斜面を駆け登ろうとした杉山さんが落ちて来た・・・・・
裏手に登りますと、台風で倒れた木が磐船に寄りかかり、登るには丁度良いとっか
かりとなっています。
修羅さんが波止場でポーズを取る渡り鳥野郎のような格好で、上で木を踏みつけ
て動かぬようにしています。その木にすがって日佳里さん、Lunaさんが上に登り
ます。
私も後に続きます。磐船の上は大人七人が上ってもなお広々しています。見晴らし
風通し共に良い場所です。
(益田磐船全景) | (益田磐船人物対比図) | (益田磐船近景・文様が刻まれる) |
修羅さんは寝そべり、杉山さんは水が溜まった正方形の穴を撮影しています。な
にやら異なモノが映ったようです。
私は虹<2G>さんやPITさんと方角を気にします。
実は、旅立つ前に「益田の磐船は天土(アメツチ)より宇(ウ:時空連続体)に至
る門である」と、妙な入れ知恵をされていた私ですが、実物を前にしてもそれが何な
のかは判然としません。
ただ、巨大溶鉱炉の基礎のようなイメージは抱きました。
いずれにせよここは飛鳥の最西部なのでしょう。ここより向こうは飛鳥ではあり得
ない。そしてそのラインを明確にする物に、北の石室があるようです。
急遽、予定を変えて私たちはその石室を目指す事にしました。
その日は小春日和でした。陽光がきらめく田園風景を前に、丸い小山にぽっかりと
開いた石室への入り口は陽に晒されていました。
管理はおざなりです。石室入り口の前を柵で囲いはしてありますが、出入りは自由
です。(もっとも人が入った気配はない)
「小谷古墳」と言うのだそうです。橿原市教育委員会の石碑があります。古墳時代末
期のもので、石室は大きい部類になるそうです。
私は先頭を切って石室の入り口へ行ったのですが、そこで固まってしまいました。
石室前のスペースは狭いので、そこで立ち往生すると他の人が来れません。怪訝そ
うな表情で横に立ったPITさんは、中を覗いて苦笑します。
「やぁ、鬼がいる」
入り口からは蓋が半ば開いた石棺が見えます。その石棺の左奥の石室の壁に闇が張
り付いています。
しばし二人で見据えていたのですが、その闇は消えません。石室内には文字とも抽
象画とも判別出来ない書き込みがあるので中は確認したいのですが・・・・・
私たちの背後に他の方々が並びます。
そっと場所を空けますが、誰も入ろうとしません。
仕方がない、私とPITさんはその影に平身低頭しながら中に入りました。
中に入るとその影は消えました。
文様はPITさんは絵と判断したようです。
観光ガイドにも載らないで、こういう古墳が存在する事に、私は奈良の侮りがたさ
を感じずにはいられません。こういう実例を見るとそこかしこの小山が全て古墳に見
えてしまいます。
(小谷古墳石棺・鬼はまだいる・・・・・) | (小谷古墳・天井の文様) |
ガストで昼食。瘴気祓いをかねて談笑。同テーブルの女性陣はPITさんの食の細さ
に驚きます。彼は決してひ弱な体ではないので余計に驚かれるのでしょう。霞を喰う
類の人なのかもしれません。(笑)
次の目的地は、前夜に「陰陽師8巻」を読みいたく感動した私が強く龍穴神社を希
望しました。
「それなら・・・・・」PITさんが軽く微笑みを浮かべて言います。「途中ですから室生へ
寄りませんか?」
「寄ろう! 寄ろう! 私、室生へは行きたい!」
修羅さんが勢い込んで賛同して決まりです。
私はPITさんに耳打ちしました。
「朝、一人で行ったんでしょう? なにかあったんですか?」
PITさんは私を黙って見つめました。その目が笑っています。
なにやら仕掛けがありそうです。
車に分乗し、三輪の大鳥居を後にして、近鉄大阪線沿いに国道165線を東へ上り
ます。左手に巻向などの山並みが連なります。この山並みには神社仏閣が点在しま
す。途中、出雲なる地名があったりして楽しいのですが、倒木が目立ちます。
「台風のせいなのかな? 倒木が多いですね」
「倒木が目立つ所は神社が多いようですが、どういう関係かな?」
そんな会話をしていると、二人して思わず「おお!!」と感嘆の声を上げる神社が
ありました。
気が昼日中でも尋常ではない濃さを放っていました。
時間が押しているので、探索はあきらめます。
室生に着いてまず私の目を惹いたのは、川の流れを挟み込むようにそびえる峻険で
す。そして空の青さです。
「天女でも舞い降りそうだ・・・・・」
そう呟くと、「また、妙なもの召還するんじゃありませんよ」とPITさんに釘を刺
されます。
川辺に近づくと、対岸の一角が崩れているのに気づきます。黒く気の残滓がありま
す。
「あれですか?」
PITさんに尋ねると「分かります」と頷きます。
「具体的に何をされたのです?」と尋ねると「腹に来たんです」と憮然としてます。
どうやらお通じが良くなるようです。帰り際、杉山さんが「腹が痛くて仕方がなか
った」と呟いた時のPITさんは凄く嬉しそうでした。(笑)
さて、朱塗りの橋を渡る時、私は川の淵に妙な物を見ました。
海草が広がったような黒を頭にに鮮やかな朱が淵の中から浮かんできます。
振り袖の女性と気づいた時、PITさんを捕まえそれを指さしました。PITさんがのぞ
き込むとそれは消えます。
「なんです?」
PITさんはいぶかしげです。
私は緊張していました。こういう現象にいちいち驚く訳ではありません。室生程の
歴史のある寺院の川辺に怪異がある事に戦慄していたのです。
(結界がやぶれているのか・・・・・)
橋を渡ると異界です。腹痛ぐらいでは済まないかもしれないと思い、印を結びま
す。
(室生寺入り口・向こう側は気の質が違う) | (被災直後の五重塔・水煙は捻られたような破壊) |
橋を渡ると参道が川沿いを遡るように右へ続きます。
「・・・・・右なんですか?」
半ば不満げに私は呟きます。
「右なんですよ」諭すようにPITさんが言います。
「あれが本体ではないのですか?」
私は真正面の山を指さします。
「あれが奥の院、いや、賽の河原でしょ?」
「ストレートに行く訳ないでしょう」
PITさんが苦笑します。私はその顔をしばし見つめます。「何?」と目顔で訊いて
来たので、「ここは室生ですか? 怖いです。男には怖い場所です」
そう告げると、PITさんは真顔に戻ります。
「いつもの室生ではないですよ。行けば分かりますが、戻ります?」
私は首を振ると、参道とは逆の左奥へ足を延ばします。
「これこれ・・・・・」とPITさんが後に続きます。幼稚園の敷地を抜けて出た場所は、川
沿いに土砂崩れがあった場所でした。
私は上を見上げます。山の奥に岩磐とも見えるものがあります。
瘴気が漏れて流れているのが分かります。
私が抱いていた室生のイメージとは異なりすぎます。首を捻りながら皆がいる場所
に戻ります。
文字を刻んだ苔むした岩などを見ながら、拝観料を払います。
杉山さんは数珠を買います。なかなか可愛い良いものです。
山門には台風の被害を受けた五重塔の写真があります。プラズマが映っています。
杉山さん虹<2G>さんも、その写真を見て苦笑します。
「関係者が写しても、なお映るのですね」
PITさんの言葉に私は山門の向こうに広がる森を見ました。
(行けるのだろうか?)
不安を覚えながら、私は山門をくぐりました。
仁王門をくぐると空気の質が変わっていました。杉木立の香りと水気を含んだ濃厚
な空気に飛び込んで、私は目をしばたかせました。
(これは無理かもしれない・・・・・)
まず思ったのはそれです。
ここは女人高野ではなく男子禁制の場所ではないかと思いました。迂闊に進むと夏
至の三輪よりも悲惨な目に遭うかもしれないと思いました。
「・・・・・私、ここは進めないかもしれない」
思わずPITさんにそう洩らします。
「・・・・・五重の塔までは行けると思いますよ」
PITさんは暫く考えてそう言います。私が感じる不安に心当たりでもあるような言
い方です。
少し進むと左手に赤い旗がひらめいています。稲荷に似た雰囲気です。
そこには四角い人工の池があり市杵島姫の社がありました。
(ラッキー!!)
そう思いました。ここに参 れば少しは進めるかもしれま せん。 お参りすると頭上から視線を 感じます。 その時、なぜ、寺のこの位置に 市杵島姫があるのだと言う疑問を 感じました。 ここは寺なのか? 寺としては気の質・伽藍の配置が おかしく感じます。 同時に市杵島姫を見て「ラッキー」 などと感じた自分に疑問を抱きました。 何がラッキーだと言うのでしょう? 頭上からの視線が増えて粘り気が 増した気がします。 |
私が参道に戻ると虹<2G>さん・杉山さんが入れ違いに社に向かいます。虹<2G>さ
んは何か感じたのか、真っ直ぐに社の背後に向かっています。
しばし観察していた所を見ると石碑でもあったのかもしれません。
杉山さんは社の敷地の奥で無意識に体を左に捻るような姿勢を取りました。
もしかすると、この辺りでお腹に来たのかもしれません。
参道を突き当たりますと左手に石畳の階段が現れます。
見上げるような坂の上に崩れた五重塔が見えます。
「空気が違う!!」
ここに来て修羅さんが抗議の声を上げます。
修羅さんは去年の夏至の三輪の時、PITさんと朝の室生を参っています。その時は
清涼な空気で非常に気分が良い場所であったようです。
「前に来た時は、階段の両横を清水が流れていたんだよ」
修羅さんはそう言います。なるほど溝があります。参道にも本来は水が流れていた
のでしょう。清水が流れていたのなら、ここの空気は清涼に澄み切っていたはずで
す。
「流れが途絶えるような事が起きたんですね」
PITさんが呟きました。
台風の被害で清水が枯れたりすのかな?
首を捻りながら石畳の階段を登ります。石の所々に赤錆のようなモノが浮き出て
シミが出来ています。PITさんはそれを指し示して苦笑を浮かべます。血糊に見える
です。
階段を登りますと、そこは台状に整えられた敷地で石を敷き詰めてあります。
その敷地の中央・五重塔の手前に長四角の噴水台のようなものあります。中
には水が溜めてあります。
(ああ、なるほど) そう感心しました。階 段から真っ直ぐに五重 塔が見えると言うのは、 視覚的には良い光景で すが、風水的には良い構 図ではありません。 あらゆる気が真っ直ぐ に階段を伝って五重塔 を目指すからです。 この噴水台は気を散 らす役割を果たしています。 見入っていると「絶妙の 仕掛けでしょう?」とPITさん が語りかけます。 「ここまでするのなら中に浮島 でも作れば良いのに」 「そんな事したら、意図とは別物 が宿るじゃないですか」 PITさんは笑います。 |
どうやらこの場所への認識は一致しているようです。
(何を封じた? 何を隠した?)
そう思った時、右手(東側)に意識が飛びました。
細い山道が東へと延びています。その先には小さな社が見えます。
PITさんはすでにその山道を登っています。
(ここは今までとは場所の質が違うぞ・・・・・)
私はそこに何があるのか確かめるべく足を向けました。
見上げるような急勾配の細い真っ直ぐの一本道です。中程に社があります。中央が
透けている社で、その透けた空間に祭壇を置き、更に奥、頂上の小さな社を拝む構図
です。写真を見ると、この社は門であり、門の向こうは異界のようにも思えます。頂
上の社は4本の杉の巨木が正確に四方を囲んでいます。
鬱蒼とした森の中、その4本の杉の間から、陽光が一筋の柱となり降り注ぎます。
見える人なら龍がこの小山をぐるりと巻いて見えても不思議はありません。
太陽信仰の場所であると直感しました。
何故かPITさんが拝み終わるまで邪魔をしてはいけないと思い、しばし彼の後ろ姿
を見送ります。
ふと、登り口の横を見ますと、苔むした岩に仏様が彫り込まれています。なにやら
文字も刻まれているのですが、私には読めません。彫られた像は多手のもので憤怒神
を想起させ、あまり世間一般の室生寺のイメージにはそぐわぬ気がします。
(・・・・・ラゴウか?)
一瞬そう思い「まさかな・・・・・」と首を振ります。ラゴウは破壊を司る凶星の名で
これを神格化したものは髪が蛇の憤怒髪として描かれる事があります。
流石に髪は蛇ではありません。だとすると愛染妙王なのかもしれません。今も手厚
く祀られているのは様子で分かります。なにやら曰わくがありそうです。
【SIN注:この辺りの画像は室生寺異聞を参考にして下さい】
参り終わったPITさんは参道から外れて、横の森の奥へ向かいます。
(やっぱり、そちへ行くんかい・・・・・)
私は階段を登って奥の社を拝みます。そこはやはり龍神の場所でした。岩磐がある
はずだと思い、社の裏手を調べましたが、岩磐は見あたりません。ちと疑問を感じな
がら、私もPITさんの後を追い、森へ入ります。北へ登る形の斜面です。見上げると、
妙に威圧的な気があったりします。
(なんだろう?)
目を凝らすと一瞬巨大な伽藍が見えた気がして目をこすります。伽藍はありません。
が、よくよく見るとかっては巨大な建造物があった事を想起せしめる礎石が点在して
います。
少し登ると下りて来たPITさんとすれ違います。
「・・・・・騙されちゃいました」
PITさんは私の顔を見ると苦笑を浮かべます。彼は石垣が見えたそうです。私は彼
が示す方向を見て、成る程見えるかと納得します。
「(天神社には)岩磐がなかったですね」
そう不満を漏らすと、「取っちゃったんでしょう」あっさりと答えます。「機能
すると困るでしょうから・・・・・」なにやら不適な笑みを浮かべると、もう用は無いと
言う素振りで下りて行きます。丁度登って来た日佳里さん、Lunaさんに何やら話し
掛けています。
(あまりこちらには人を寄越したくないんだな・・・・・)
そう思っていると私の横を修羅さん・杉山さんが「ず、ざっざっ」ってな感じで
威風堂々登って行くので、果敢な方々だと苦笑します。
修羅さんが行った方向は何やら剣呑な感じでしたので、後を追います。ある程度登
ると黒い煙のようなモノが球状になり浮かんでいます。なんだろうと注視していると、
右の頬に熱を感じました。放射熱のような感じです。
(・・・・・火事?)
そう感じました。遠い昔、ここで火事があったのかもしれません。
これ以上は登りたく無くなったので、私も下ります。南西方向に下りると小さな小
道があります。西へ向かうと本来の参道へ出るようです。しばらく進むとPITさんと
日佳里さんが立ち止まって何かを見ています。苔むした古い墓がみっつ並んでいまし
た。なんだってこんな場所に墓に立てるのかなと疑問を感じます。墓は石組みが崩れ
た窪地のような場所にありました。
(室生・奥の森。明らかな礎石。謎の半円形 の穴が見受けられる) |
(織田家廟) |
坂を飛び降りる感じで参道へ戻ります。
参道から今までいた森を眺めると、参拝客がほいほい入る構図ではありません。
禁足地だったんかなと思いながら参道上の台地へ出ます。長方形の台地の森側の奥
が怪しい。まず墓があるのですが「織田家廟」!
あの織田家じゃないよねなどと思いながら、良く見ると側の木が不自然なほどに曲
がって伸びています。気脈や地脈の影響で木々が不自然に曲がるのは良く見られる現
象です。墓の辺りは何かのポイントのようです。
そしてその奥、森に面した側には朱色のお堂。修円僧都と言う方の廟らしいですが、
明らかに結界です。
やはり森は禁足地なんですねとPITさんと話している所へ、この廟の後ろから杉山
さん・修羅さんがにゅと顔を出します。PITさんは「きゃ」と叫びそうでした。
ここまで来ると五重の塔は目と鼻の先です。
全員で側までよります。
倒木による被害は凄まじいものがありました。ただ、水煙(頂上の金属部)のひし
ゃげかたは倒木によるとは思えぬ奇妙な曲がり方でした。
普通ならここから本殿なり奥の院にお参りをするのでしょうが、私とPITさんが動
かないので、みな漫然としています。
虹<2G>さんは織田家の墓の前で腕組みをしています。
私とPITさんは並ぶようにしていました。PITさんは奥の院に向かう参道の西側斜面
を睨んでいます。そこにはお地蔵さんが並んでいます。
「・・・・・やっぱ、向こうは賽の河原でしょ」
そう語り掛けると頷きながら「これ以上は私も行く勇気はないですね」と答えま
す。するとLunaさんが「無性に奥の院へ行きたいので、一人で行って来ます」と言い
残し、奥の院の参道を駆け登って行きました。
Lunaさんの言葉が聞こえていなかったPITさんは「大変だ憑かれたのかもしれな
い」と笑います。
「いやいや、無性に行きたいだけだそうですよ」
そう答えると、「無性に・・・・・?」とPITさんは今度は苦笑を浮かべます。
「流石ですね」
良く意味が分からないオチがついた所で我々は龍穴神社へ向かうのでした。
伝説があります。
龍王はもとは奈良の猿沢池に棲んでいた。ある日、一人の采女が身投げしたの
を嫌い、春日の奥山の香山(こうぜん)に移り棲もうとしたが、そこは死人の
捨て場であったので、室生の里までやってきた。(古事談)
伝説には必ずなにがしかの事実が含まれているものですが、この伝説は我々に何を
伝えようとしているのでしょう?
龍穴へ向かう時には私はこの伝説は知りませんでした。
「陰陽師」で描かれた龍穴神社の清々しさへの憧れだけがありました。
室生寺を出た時は陽は傾き始めていましたが、ここまで来た以上は龍穴へ行こうと
意見が一致、室生川に沿って国道を北へと向かいます。
室生寺へ行くまでは観光客のものらしき車も見ましたが、こちらへはほとんど誰も
行かないようです。
龍穴神社は国道沿いにひっそりと佇んでいました。
気をつけていないと森に隠れて見落としそうです。
専用の駐車場もないようなので、邪魔にならぬよう車を止め、龍穴神社にお参りし
ます。
(龍穴神社全景) | (龍穴神社本殿) |
昼なお暗いと言う表現がこれほどしっくり来る場所もないでしょう。鬱蒼とした森
に包み込まれたような神社です。
鳥居を潜ると空気が比喩なしに変わります。ひんやりとした水気を含んだものにな
ります。くぐると其処は砂地の四角形の場所になっています。
PITさんが河口湖御室浅間神社と雰囲気が似ていると言います。
この敷地の奥に灯籠と狛犬に挟まれた石段を登る形で社があります。前回の飛鳥で
猫が伝えてきた奇怪な形の灯籠が本当にありました。写真は何枚か撮りましたがフラ
ッシュを焚いても夜間撮影のような画像になってしまいます。
下記の写真はPHOTOSHOPで明度を最大にしたものですが、まだ暗い。
(猫が教えてくれた石塔・生首が飛ぶそうだが・・・・・) | (龍穴神社奥の院・水神にふさわしい霊気を放つ) |
(神域なんだ・・・・・)
つくづくとそう思います。場所としては尋常な場所ではないでしょう。森の奥の山
肌にはアーチ型の穴(室生寺にもあった。これは一体なんだろう?)があったりして
興味をそそりますが、ここでは特攻かける気にはなれません。
目指す吉祥龍穴はこの神社の奥にあると看板が立っています。社務所に連絡せよと
ありますが、すでに無人なのでやむなく車で龍穴へ向かいます。
車一台がようやく通れる狭い道を行きますと、右手に天の岩戸神社が見えます。
神社と言っても、岩の上に社があるだけなのですが、天の岩戸なるまっぷたつに割
れた岩磐もあります。
古代の祭祀形式がそのまま残るような場所ですが、何か凄惨な感じがします。
天の岩戸の向こうに何かがあるような気がして写真を撮ります。
さて、この写真、向こうに大きな建築物が見える方がおられるのですが、皆様は如
何でしょうか?
(天の岩戸;向こう側は崖で大木も写らないはず・・・・・) | (天の岩戸:社 祭神も不明。寂れ方に落涙する) |
実際にはただ森が広がるだけの場所ですが、本来は禊ぎを済ませて朝日を拝む場所
であったのでしょう。
そこからさほど遠くない場所に吉祥龍穴の看板がありました。
車を降りると車道左下の森の梢の間から水音が響きます。
それだけで私は歓声を上げ、石畳の階段を駆け下りていました。それほどに私はそ
の場所が嬉しかったです。(知りもしない場所なのに・・・・・)
清涼な水気を含んだ森独特の香気を胸一杯に吸い込み階段を駆け下りると下足厳禁
の舞台のような場所がります。
(吉祥龍穴:拝殿 注:土足厳禁) | (吉祥龍穴:上部の滝) |
巨大な一枚岩を抉るように流れた水が滝となり一本の流れとして落ちていく所を見
下ろすようになっています。
早速写真を写しますが真っ暗です。
夕暮れですし光度の関係でしょうか? 同じ機種を使用している杉山さんが「ホ
ワイトバランスを調整してみたら写りますよ」と助言をくれます。
同じ設定にしたのですが・・・・・真っ暗でやんの・・・・・(/_;)
結局撮影できたのは1枚だけです。それでも妙にぶれて良い写真ではありません。
(本物の霊域だからそういう事もあるか)
私は深く考えず。雰囲気を楽しむ事にしました。
どんなに文章を綴っても、私には陰陽師で描かれた世界以上のものは書けません。
ただここは地球が生まれるダイナミックな動きを静かに体へ刻み込んでくれる場所
です。
これほど巨大な一枚岩を4,50人が寝そべられる程に椀上に水が削っています。
奥には小さな滝があり水が流れています。
その滝が川となる向こうには、椀上の岩と同質のものであろう屏風岩があり、その
川縁に穴があって注連縄が張られています。
龍穴です。
異界の門にも見えてしまいます。
川を渡ればその詳細な写真を写せるのだがと考えていたら、後日、PITさんが接写
をしていました。彼は川を渡っていないのにどうやって写したのだろう? 念写と言
っても差し支えがないものでした。
(吉祥龍穴そのもの。上部の一本の筋に注目) | (接写機能のないカメラで筋をアップ撮影したPITさん) |
言葉にせずともこういう場所では気を堪能するのが第一と皆考えているようです。
思い思いに岩場に寝転がったり(ただし滑りやすいので危険)、水に水晶をつけて
浄化したりします。
リビドーが抜け落ちたような心地を味わう事が出来ました。
是非、夏は避暑に来たいものだと意見が一致して我々は宿へ急ぎます。
PS:吉祥龍穴は大変希有な聖地であり、メジャーになって欲しい場所ではありませ
ん。後日、写真(他の方)のを拝見すると、やはり相当危険な場所とも言えたよう
です。観光目的だけでは行かない方が良いようです。
龍王の伝説は采女と死に彩られています。何故そのように彩られたのか?
そして竜王の安住の地が吉祥龍穴なら、汚してはならないでしょうね。
宿では小角さんと日出倭さんが合流しました。
日出倭さんは三輪山参拝に当初から名前が上がっていながら、ようやく今回参加が
かないました。もっとも宿までの道中も安穏なものではなかったそうですが、それは
彼が人ならざる者に魅入られる特質を持つからでしょう。
PITさんが日出倭さんを見て、どう反応するか楽しみにしていたのですが、ひょい
と顔を上げて「やぁ」と呟くだけです。
「・・・・・初対面でしょ?」と横でつつくと、「あ、そうでした?」と首を捻ります。
なにやら知己の方に見えたそうです。
翌朝、大神神社駐車場へ。
そこにはM/A-Shadowさんご一家+1名、しげさんが待っています。
日出倭さんは登山装備で肌の露出がほとんどありません。虹<2G>さんが「なんでそ
んなに重装備なんですか?」と尋ねます。
日出倭さんにしてみれば、これでも装備は足りないのだろうなと思いながら「どう
です?(行けそうですか?)」と鳥居の向こうを指し示して尋ねます。
「空気が近所に似ているから・・・・・」日出倭さんはそう答えました。
前回リタイアしている私にしても、日出倭さんの不安は他人事ではありません。
「大丈夫! 今回はスタンガン持って来てます!」PITさんが楽しげに言いますが、
スタンガンって霊山に登るのに必要な装備なんだろうか?
二の鳥居を潜った時点で、私は違和感を覚えます。
いつもならここで気の質が変わるのですが、何の変化もありません。小角さん・
M/A-Shadowさんも奇妙に思っているようです。
「台風で結界が壊れているのかな?」
PITさんはそう呟きます。実際、これでは単なるハイキングです。PITさんは参道右
横の水路の奥に興味を惹かれたようです。普段なら注意を向ける余裕のある場所では
ありません。私もそれに興味があったので写真に収めます。
これなら案外気楽に行けるかもしれないと思い、今、写した写真を眺めます。
・・・・・・・・・・あかんわ。
やはり三輪は三輪です。人為的結界が無くなっているだけで、神気は衰えていませ
ん。気を引き締めて本殿へ。本殿は未だ改装中です。これだけ長引く工事も珍しく思
います。正月の準備のためでしょうか? この辺りには騒然とした空気が漂っている
ようです。人の焦りのようなものが溢れています。
(参道:水路) | (修理中;本殿) |
仮本殿の方は多少空気が落ち着いています。 何故か、今回、私は本殿を拝む気にはなりま せん。からっぽだと言う印象が強いのです。 私の注意は山頂というか、空へ向いています。 今回のお参りでは総じて気が空へ突き抜けて いた気がします。 仮本殿を覗いていたPITさんは「やはり三柱で すね」と言います。何か見たようです。 狭井神社へ向かう参道を歩いていますと、左手 の池から水が抜かれていました。ちと度肝を抜 かれました。これでは結界は作用しないでしょう。 大がかりな気抜きをしているようですが、異常事 態と言えるでしょう。 |
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(仮本殿) | 何があったんだろう?と首を捻ります。 |
鎮女池は気の感じが軽くなっています。まるでメンバーの入れ替えがあった感じで
す。
(狭井神社。オルゴンが尋常な量ではない) | (御神水) |
御山に入って違和感の原因がはっきりしました。
破壊です。
台風の爪痕は壮絶の一言に尽きました。小川沿いの参道に山林組合の方でしょう
か? ヘルメットを被った方が呆然と立ち尽くしています。
珍しくPITさんが話しかけます。
おじさんは余程話し相手が欲しかったのか蕩々と被害の凄まじさを語り始めます。
要約すると、この辺りの被害はまだマシで、山頂付近は手を付けられない状況だと
言います。なんでも最大瞬間風速300メートルの突風が頂上を吹き荒れたそうで
す。社の位置まで変わってしまったと、おじさんは語ります。
「こんな事は言っちゃいけないんですがね・・・・・」
おじさんは私たちを見回すと、笑いを含んだ表情で言います。
「頂上は木が無くなって、鳴門大橋まで見渡せるんですよ」
「・・・・・淡路が見えるんですね?」
そう尋ね返すと嬉しそうに頷きました。
私は彼が何を伝えたかったのか分かった気がしました。彼がどういうサイドで、ど
ういう信仰を持っているのかも理解出来た気がしました。
「70年か80年に一度こういう事が起きるんですよ」
彼は別れ際にそう言いました。
岩磐が見え始める辺りになると被害の凄まじさが度を超して来ます。樹齢数百年と
言う木が根本から倒れているのはざらです。
倒れた上に異常な螺旋状の力でねじ切られたものが散在しています。
興味深いのは根本の土です。
三輪山は余程土が少ないと見え、どんな大木でも根は浅く、土が少ないのです。
時として倒木の下を潜りながら、我々は進みます。
参道は通常のコースが倒木で閉ざされているので、急遽コースが変えられていたり
します。
私は喜々としていました。
祭りの後の早朝のような突き抜けた空気の旨さがそこにはあります。
「解放感」
私は全身でそれを感じていました。体の細胞が快感を感じています。嘘のように体
が軽く、自然に笑みが漏れます。
罪深い事なのかもしれません。メンバーの中には、この惨状に心を痛め吐き気まで
催している方までいると言うのに、私は歓喜を止められません。
頂上に来た時には、歓喜は頭のてっぺんから突き抜けてしまいました。
なにもありません。
頂上は見事に何も無くなっていました。
岩が露出するだけの頂上からは、ほぼ360度の視界が開けます。
(これこそ本来の三輪の姿だ!!)
心の中でそう叫んでいました。
海が見えます。空から何かが語りかける気がします。
しげさんが、頂上の社の名に気づいて私に教えてくれました。
日向社。
(台風の傷跡) | (周囲の樹木がなぎ払われた日向社) |
知っていた・・・・・いや、予想していた事ではありました。が、改めてその名を聞く事
に神意があったように思えます。
頂上から天香具山を望む写真を私は撮りました。このHPの表紙です。
タブーを破った訳ですが、破れるだけのパワーが私にはあったようです。
その社に祭られた方はこの写真の光景を前にして、そこにおわしているのです。私
はこの写真をPCの壁紙に設定しました。
奥津岩磐の辺りから、私はポイント探しを始めました。特にPITさん・M/A-Shadow
さん・日出倭さん辺りには気づかれてはいけないので(いけない事をするつもり)、
なるべく単独になるよう行動を心がけます。
奥津岩磐から下りた所で誰かが岩に腰掛けています。黒い影のように見えます。側
で虹<2G>さんが立ちすくんでいます。
「あ、SINさん、PITさんがおかしいんです」
PITさんは座り込み腕の中に頭を埋めて動きません。
この状況には覚えがあります。試しに棒でつついて見ますがやはり反応はありませ
ん。
これがPITさんでなければ慌てて、呼び戻しをするんですが、自分がしようとして
いる事を行えば、帰って来るだろうと言う確信がありました。
「ちょっと見ていて上げて下さい」
虹<2G>さんにお願いして私は下へ下ります。
オガミの方向へ向かって自然の社が出来ていましたが、これではないようです。
やはり奥津岩磐かなと戻るとPITさんと虹<2G>さんが下りて来ます。
「大丈夫ですか?」と声を掛けますが、PITさんは聞こえていないようです。口の中
で一心に呪文を唱えています。左目が潰れています。
(こりゃ、声かけたらやばいわ)
そう思い、「下は何もないですよ」と言いながら無視して上へ行きます。思えば虹
<2G>さんには一切の説明をしていなかったので気の毒でした。
(人事不省のPITさん) | (秘密の場所) |
(儀式の後) |
上では絶妙のポイントがありました。面白い事に仲間の姿はどこにも見えません。
結界を張り、昨年からの課題を仕上げます。
どれくらいの時間が過ぎたのか、誰かが結界を破って入って来ます。
鬼かと思うとPITさんでした。
「なぁ〜にをしてるんです?」
笑っています。あれだけの状況から瞬時に復活する呪文ってなんだろう? 改めて
彼の底の深さに驚きます。(逆に言えばそれほどの人を陥れる三輪の恐怖があります)
PITさんは私がしていた事に検討がついているようです。
「やっちゃったんですね」と言います。
私たちは拭う事の出来ない足跡を三輪に残して来たのでした。
余談1 日出倭さんは狭井神社で住所と名前を記しただけで神官の方をおののかせ
た。
余談2 たすきを返す時、「禁足地を歩かせて頂きありがとうございます」と言う
と神官の方はおののいた。
軽く昼食を済ました後、次の目的地天香具山へ向かう事にします。
多少道に迷いまして、奈良国立文化財研究所の向かいにある案内所に杉山さん・
小角さん・虹<2G>さんが道を尋ねに行きます。
・・・・・・・・・・帰ってこない。(苦笑)
覗きに行きますと個人でこの辺りの案内をされている辻本翁の演説に捕まっている
ようです。
時間に余裕がある方ならここ天香具山案内所でじっくりお話を聞くのは収穫がある
でしょう。
目の前に「泣沢女神社」がありますので、私は資料だけ購入してこちらを観察します。
素直に参拝客を本殿に向かわせない作りです。
「なんだってこういう作りにするのかね?」M/A-Shadowさんが尋ねます。
「安全性(参拝者への)でしょう」
そう答えます。
(泣沢女神社本殿) | (泣沢女神社:稲荷) |
実際名前によるイメージのすり込みから「悲嘆」が塗り込められているようです。
日佳里さんは感応してしまったらしく辛そうな表情を見せています。
長居をする場所ではないなと思っていると、道を探していたPITさん修羅さんが戻
って来ます。
山道を登り池の畔に車を止めます。
そこから天香具山神社への道があります。
割と大きめのお堂の横を潜ると石碑がありました。
「富士浅間神社」そう刻まれています。こことは縁が浅くないPITさんと修羅さんに
石碑を見せますが、二人とも何故ここに富士が出るのか理解は出来ないようです。
天香具山神社はたいそう古びたものでした。
きちんと機能していたら京都の松尾神社に似た雰囲気になるのでしょう。かっては
山頂から水が湧き出ていたと思われます。
ここから長い石段を登って頂上へ向かいます。見上げるとめげそうな斜面です。
黙々と登っていると違和感を感じます。
「ここ、変じゃないですか?」
PITさんに尋ねると「変ですよ・・・・・でも上手く言えない」
なんだろう登るほどに違和感は増します。
唐突に生き物の気配がないのだと気づきました。虫はおろか鳥の姿さえ見えないの
です。向かいの山では烏がうるさく啼いているのに、この天香具山では気配がないの
です。
(頂上の水瓶) | (鹿の肩胛骨で占いをした碑文) |
私は警戒態勢に入りました。
霊的に強いものは感じないのに、なにか不自然です。
後ろで日出倭さんが顔をしかめています。何かあったのかもしれません。
違和感を感じているのは私とPITさんだけのようです。
頂上は国常立神社です。横にはタカオオカミが祭られます。このタカオオカミの社
の前には壺が埋められているのが特徴的です。かってこの瓶の水位で雨乞いなどを行
ったのでしょう。
(天香具山神社) | (頂上:国常立神社) |
ここから夕日は絶景でした。
写真を写すと緑色の壺のようなハレーションが出る偶然に笑いました。
後日、他の方の写真を見ると私とPITさんの後ろ姿が奇妙にぶれている。どうやら
私たち二人には剣呑な状況があったのでしょう。異界へ迷い込む時はああなるのかも
しれません。上の井御前辺りに足を延ばすと危なかった気がします。
(かすむ二人。異界へ迷う時はこうなのかもしれない) | (マナの壺) |
帰路、月の誕生石と言う変わった石があると言うので見に行きます。
そこに行くまででも屋敷の跡ではないかと言う場所があったり、十七・八の娘の幻
を見たりと妙でした。
月誕生石は高さ1.5メートル。奥行き3メートル。幅6.5メートルの花崗岩で
す。中央に白いくぼみがあるので腹帯に見える事から、月誕生石と言うらしい。
石の専門家であるM/A-Shadowさんは「ただの石だ」そう断言します。
私には何か(分からないから)不気味な石ではありました。
(月誕生石) | (解説) |
こうして私の4回目の三輪山探訪は終わったのです。
私のレポートなどから「三輪山へ行きたい!」って言う方もおられるようです。
ここで以下の事項を通知します。
1.三輪山は参拝行為です。ただ楽しみだけで参加するとご自身だけで無く周囲も迷
惑します。この点ご理解下さい。(人員制限もありえます)
2.詳しく書いてはいませんが、三輪山は危険を伴います。人事不省に陥るケースも
あります。
私自身が危険を被る最有力であるので、参加者の方々の身の安全は保証していま
せん。
3.2を踏まえてご自分の身は自分で守る、あるいは捨てて逃げられる覚悟のあ
る方が参加しています。
4.以上の理由よりオフ告知はいたしません。
わざわざ書く事ではないですが、以前、「自分たちだけ楽しんでいる」と言う趣旨
のストーカーじみたメールを出しまくる人がいたんで、念のために書き添えました。
お目汚しをお詫びします。