【三輪の蛇】
毎度おなじみ、すーさんからの投稿です。
前出『蛇玉』に続くお話ですが、私の祖母は大変信心深い人でした。
『蛇玉』で登場しました私の伯母。
祖母にとっては大切な一人娘です。
その一人娘が、祟りのせいで妙齢になっても浮いた話の一つも無く、伯母の事を愛して
いると結婚を前提としたお付き合いを申し込まれる男性が何人かおられたのですが、当の
本人は
「男の人に言い寄られると、寒気が走る。」
などと言い、祖母は心を痛めておりました。
祖母の友人のある方に
「三輪山へお参りに行き、巳様にお許しをお願いしてみては?」
と進められ、参拝する事に合いなりました。
私は当時、3〜4歳、幼い頃から遊園地や動物園等、子供が喜ぶ様な所へ遊びに行くのが
嫌いで、祖母が良くお参りに出かける神社仏閣に行くのが大好きという少し変わった子供
でした。
幼い事もあり、遠出は無理だったのですが、祖母に連れられ関西一円の有名な霊場はほ
とんど連れて行って貰っていました。
この日も、祖母、伯母、私と朝早くから電車を乗り継いで三輪山へ行きました。山道に
は古木がうっそうと並び、その根元には御神酒と生卵がお供えとして置いてありました。
子供心に、不思議だなぁと思いつつ参道を歩いていました、当時の私は御神酒だとは知
らずに、お水が置いてあるのかな??と思っていましたが…(;^_^A
やっとお社まで辿り着き、祖母と伯母は社務所で事情を話、お祓いを受ける事になりま
した。
その間、境内で二人を待っていた私は、何となく、ある古木の根元をぼんやりと眺めて
いました。
すると、森の奥からするするとかなり大きな白い蛇が現われました。
「わあ!真っ白な蛇さんや!綺麗だなぁ」
と、私は大喜びです。
良く見ると、目は真っ赤で眉間には何やら赤い涙型の模様が入っています。
今、思い起こすと、勾玉か炎の様な模様だったのですが、幼い私は、少女漫画に登場す
るお姫さまの冠の宝石の様に感じたのです。
その白蛇はしゅるしゅると私に近づいて来て、じっと赤い瞳で私の方を見ています。
「蛇さん、こんにちは、素敵な宝石を着けてはりますねぇ。とっても綺麗やわぁー。」
と話し掛けてしまいました。
すると、白蛇はぱちぱちと目を瞬かせ、木の根元のグラスになみなみと注がれている御
神酒にこれまた赤い舌を少し入れ、舌を入れたかと思った瞬間にグラスの御神酒がみるみ
る無くなっていったのです。
「たくさん飲んだね、美味しかったですか?」
と尋ねると白蛇は、こくこくと首を上下させ、くるくるとトグロを巻いています。
「美味しかったの?良かったね」
と語り掛けているうちに祖母が社務所の方から
「すーちゃん、どこにおるの?」
と呼び戻す声が聞こえました。私は白蛇に
「お婆ちゃんが呼んでるから行くね。又、会おうね、さようなら。」
と告げると、分かったとでも言うように又、頷きトグロをするりと解き、元来た森の奥へ
かき消すように行ってしまいました。
私は祖母の元へ帰り、祖母と一緒におられた神官さまに今、見た白蛇の事を嬉々として
話しました。すると、神官さまは驚き
「最近は私たち神職でもなかなかお姿を拝見する機会は少ないのですよ。」
とおっしゃられ、伯母のお祓いより念入りに私の事を神様に祈って下さいました。
伯母の事は、どうしても祟りを祓う事が出来ず、何でも南米に居る蛇の神様、体長が40
メートル程もある大蛇だそうですが、お怒りだとの事でやはり生涯独身になってしまいます。命を取られないのが不思議な位だと。
私の事は、帰宅されたら2〜3日、熱が出るかも?でも、このお嬢ちゃんは大丈夫、障
りはありません。但、お身内のどなたかの命を繋ぐ役割をされるかも知れません。とのお
話でした。私たち一行は神官さまにお礼を申し上げ三輪山を後にしました。
そして、私はしっかりと一週間高熱にうなされ、父母を大変心配させました。
伯母の祟りのお話はまだ、高野山でもありますが、そのお話は次の機会にさせて頂きす。