怖い話 第8集


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 ミッチです。
 数年前の話になります。
 
 近所にとある霊山があるのですが、
週末そこに参拝しようと思いたちました。
 そこで、家にお祀りしている神様に
「週末〇〇山に参拝に行こうと思います。よろしければ一緒に行きましょう」
 とお声がけして週末を待ちました。
 (私零感です。念のため。)

 すると週末、残念なことに小さい雷と小雨に見舞われる朝となって
しまいました。
 仕方がないので、お祀りしている神様に
「本日は天気がよくないので、参拝は取りやめたいと思います」
 とお声がけして振り返ったらびっくり。
 その間わずか数秒で窓の外の雨は止み、まばゆいばかりの
日差しが降り注いています。
 
 たまたま雲に隙間ができただけかも知れませんが、なんとなく
求められていることがわかりまして、出かける準備にとりかかります。
 この時点でなんとなく今後の展開がわかってはいたのですが、
とりあえず山の麓まで行って改めて考えようと思いました。 

 さて、3~40分かけて山の麓にたどり着いたのですが、
やはり雷と小雨が続いています。
 普段なら渋滞をおこすほどの登山者もほとんどいません。
 私は雷の中の登山はNGな人間なので、麓のお不動様にご挨拶だけ
して帰ろうと思いました。

 不動堂にお参りし、般若心経1巻と不動明王真言を上げ、
「本日はこれにて失礼します」
 と深く一礼したとき。
 頭上で大きく「ドーン」と雷がなりました。
 今にして思えば不思議なのですが、「バリバリ」といった余計な音なく、
大太鼓を鳴らしたように「ドーン」と鳴り響いたのです。
 それまでずっと遠めの小さい雷でしたし、もしかしたら実際には音は
鳴っていなかったのかもとも思うくらいです。

 ともあれ、その時感じたのは
「お祓いだ」
 でした。
 本来は「お祓いしてくださった」と思うべきなのですが、
その時ばかりは「マジか!」という気持ちが混じってしまいました。

 顔を上げてお不動様を見ます。
 ここが切所だと思いました
 臆病な私にとって、雷の鳴る中の登山は絶対的NGです。
 でもここは退いてはならないところだと覚悟を決めました。

 数珠を出して握り、光明真言と不動明王真言を唱えながら登りだします。
 登山道自体は舗装、整備されているのですが、普段と違いほぼ人がいない
中での登山は緊張感が違います。
 やがて、舗装されている登山道とされていない鎖場への分かれ道に
来ました。
 「今日は雨も降っているし安全な舗装されている方で登らせていただきます」
と思った途端、
 鎖場へと続く転落防止用のガードレールが
「ガンガン!」
 と2度鳴りました。

「はい、わかりました・・・」
 とお答えして、鎖場の方へ向かいます。
 
 ぜいぜい息を切らせながらやっと鎖場をクリアし、
見晴台に到着しました。
 そこには神社があります。

 鳥居をくぐって階段を上り、お社の前で
二礼二拍手し、天津祝詞を奏上します。
 そして深く一礼したとき、同時に頭上で
「ドーン」と鳴り響きました。
 麓での雷鳴と同じでした。
 空を見上げると雲の中に力を感じて、柏手を打ちます。
 
 その後は、雨も弱くなり雷もさらに遠くなり、周囲の緊張感
というか、視線だったのでしょうか、そういったものも感じなく
なりましたので、中腹のお寺まで行って精進料理をいただいて
下山しました。

 今にして思うと、大きな分岐点になった参拝だったと思っています。
 試されると同時に、信じるとはどういうことかを教えられた気がしました。
 零感人間のそれっぽい1日でした。

なお、本投稿については、庵主様にご了解をいただいておりますが、
著作権は投稿者が保持し、転載を禁止させていただきます。

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